「ですから、三人集まったら文殊の知恵に」
ご飯を食べて、お風呂の順番待ちの間にテレビを見ていた。今日の私の順番は結構後ろの方だったからまだまだ時間はある。その間を、適当なチャンネルに合わせられたテレビで潰さないと暇でしょうがない。とっくにお皿洗いや洗濯なんかのお手伝いも無くなってしまった。
テレビはクイズバラエティを流していた。クイズのせいもあってで比較的年齢の高い子達が見ていた。
テレビでは芸人が色んな諺や慣用句の説明をしていた。すらすらと説明していく所を見たらこの人はすっごく頭がいい人なのかもしれない。最近の芸人は頭が良くなかったらいけないのかな。もしもそうだとすれば大変にも程がある。高学歴が持て囃される時代なのだからしょうがないのかもしれないけれど。次々といろんなことわざの説明をされていく番組を見続けているうちに、話を半分以上は流して聞いていたのを少しだけ後悔した。なんでそんなところの行き着いたのか、結果だけを知ってしまって過程が見当すら付かない。ことわざの意味も成り立ちも知らないで語句の羅列だけはしっているよ状態になってしまった。後で誰かに聞いてみようかな、少なくとも一緒にテレビを見ていた人なら分かるはずだと思う。
ふと隣を見るとリュウジがかなり真剣にテレビを見ている。リュウジに聞こう。ここまで真剣に聞いてくれているのならばこの芸人さんも本望なんじゃないかなとか思った。
「ねぇリュウジ。三人集まれば文殊の知恵ってどういう意味」
「三人寄れば、ね。さっきテレビで説明してたよ、一緒に観てたじゃん」
「そこだけ聞いて無かった」
「じゃあさ人は歩くに続く言葉は?」
「…わかんない」
「歩く葦である。そこだけじゃないじゃん」
リュウジは溜息を吐いた。だって説明が長かったんだよ、と反論をすれば注意力が足りないんだよと返された。ごもっともです。芸人さんは分かりやすく説明してくれたのかな、それならちゃんと聞いていればよかったかもしれない。そうすればリュウジに溜息も吐かれずに済んだかもだ。
「一人よりも三人で考えたら良い考えが生まれるってことだよ」
「リュウジは記憶力がいいね」
「こんなの常識だよ」
褒めると顔を真っ赤にするリュウジは可愛いな、と思ったら。むすっとされた。どうやら口に出ていたらしい。機嫌を損ねてしまったら中々根に持たれてしまうからいやだ。悪気は無いんだよと伝えても機嫌を直してくれない。何かいい考えないかな。
こんな時こそさっきの諺が活用されるんじゃないかな!と私はひらめいた。だけど周りを見渡しても私とリュウジと晴矢とヒロトしかいない…。変態とチューリップには荷が重いかなと思う。
…そういえば人は歩く葦である。ということは葦を二本持って来たら良いということに「ならないよ、馬鹿でしょ」