メフィストがゲームに意識を戻したのを確認すると、トオルは正面の夜景と場の空気に感じ入った。
(それにしても、『ここ』は風があって蒸し暑さも下よりマシだな。
眺めもいつもに増して幻想的だ。)
次いで上を見ると、薄曇りの夜空で星が見えないのが惜しいと思った。
(ああ、そうだ。)
トオルはコンビニで買った自分の物を取り出した。
プシュ
発泡する缶飲料の蓋が開く音が響いた。
そしてトオルはゴクゴクとその缶飲料を飲む。
「みゃはー、おいしい!」
コトンとテーブルに缶を置くと、トオルは顔を綻ばせながら、同じく買ったチョコ菓子を開けて口に放り込んだ。
(はふ、やっぱりこれだねえ。)
トオルは夜景を眼下に、大悪魔2人に挟まれたこの状況が、あまりに幸せで心が浮き立った。
と、その時、ふと悪魔2人の視線が自分に注がれていることに気づいた。
「あ、れ?どうかなさい、ましたか‥?」
メフィストがゲームを中断して言った。
「‥いいえ、貴女の神経の太さを再確認しただけですよ‥。」
「トール、それは本当に美味しいのですか?」
アマイモンがちょっと興味あり気に爛々と言った。
「いやあ、アパートは蒸し暑くて眠れないし、明日(今日)の仕事は遅番なので、奮発してみました!」
笑顔で答えるトオル。
それに対してメフィストがニコリとして言った。
「この館で缶ビールをチョコ菓子と一緒に豪快に飲んだのは、貴女が初めてですよ‥。
ええ、見事に飲んでますね。」
生暖かい目差しだ。
「ビールはそんなに美味しいのですか?」
アマイモンはビールが気になるらしく、お菓子を食べる手を止めて問うた。
「あーさま、味見しますか?
ア〇ヒスーパードライだから辛口ですっきりキレがあって、それがまたお菓子と合ってて美味しいですよ。」
「へえ。」
関心を示したらしいアマイモンが、缶ビールを手にしてグイとひと口飲んだ。
「どうですか?」
トオルはアマイモンの感想を待った。
すると、アマイモンが舌を出して顔を背けた。
「‥ニガイ。
これ不味いです。
こんなものが美味しいだなんて、トールの口は変です。
兄上、やはりトールは変です。」
「トオルくんは最初から変ですよ。
ハハハ、アマイモンに大人の味はまだ早いようですねぇ☆」
メフィストが面白がって笑った。
「あーさま、ビールの辛みと苦味が、甘いものを美味しくしてくれるのです!」
「ボクはいりません。
甘いものはどう食べても甘いんですから、いりません。」
「そうですか‥。」
ちょっとガッカリしつつも、トオルはビールをグイグイと飲んで、あっという間に缶を空にした。
「ちょっとトオルくん、貴女はなんて飲み方をするんですか!」
「え?」
「どこかの酔いどれザル女じゃあるまいに、もっと味わいながら嗜みなさい!」
「はい、わたし飲み物ってゴクゴクいっちゃうみたいで、でもいい一杯でした!」
メフィストは『まったく』等とぼやきながらも、またゲームに戻った。
すると今度は、アマイモンがトオルのキャミソールの肩紐を引っ張ってきた。
「トール、トール、ほら、こっち。」
「あ、はい、うむぐ!?」
突然アマイモンがトオルの口に、チョコ付きスティック菓子(ポッ〇ー)を数本突っ込んだ。
「あ、あーひゃま!!?」
トオルは口から〇ッキーが半分はみ出たまま、どうしたらよいかと困ってオロオロした、
瞬間だった、アマイモンが口を開けてトオルに接近すると、くわえたポッ〇ーの半分に噛みついて唇とが、トオルの口と一瞬かすれ当たって、それからパキンと音がして折り食べた。
「ボクとトール、同じ味です♪」
アマイモンの口元が愉しそうに歪んだ。
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モドル