ポットの蓋を開けて茶葉を取り出すと、一面に苺の香りが広がる。

「いい匂いだ」

メフィストは棚から二人分のカップとソーサーを出し、ポットと共にトレイに乗せる。
日吉はメフィストの横に付いて立ち、淡々と作業を進める姿を見ている。

「若、これを持って先に行ってろ」

日吉は小さく返事をしてトレイを持ち、窓際の机に向かった。
机を改めて見ると飲食するには散らかっていて、日吉は片手で寄せたり重ねたりしてスペースを作った。
十分な広さを確保した日吉はカップをセットする。

日吉は椅子に膝を立て、見えないメフィストを伺う。
ジッとその方角を見てまだかと、戻ろうかと日吉は考える。
そして日吉が椅子から膝を下ろし向かおうとしたら、メフィストが皿を持って奥から出てきた。

「何だ、そんなに待ち遠しかったのか?」
「…調子に乗ってまた飛ばして落としてないかと思っただけです」
「それはいらない心配だったな」

メフィストは日吉の前に皿を置く。
そこには顔の大きさ程の真ん丸なきつね色のホットケーキが乗っかっていた。
次いでフォークとナイフ、メープルシロップに蜂蜜と置いていく。
日吉がホットケーキに見入っている間に、メフィストはカップに紅茶を注ぐ。
辺りにホットケーキとストロベリーティーの匂いが漂う。

「見てないで食べたらどうだ」

メフィストは椅子に座り紅茶を一口飲む。
日吉は椅子を机に寄せて正座し、「いただきます」と言いナイフとフォークを持つ。
切り込みを入れると湯気が立った。
息を吹き掛けて少し冷まして口に運ぶとフワっとして、程よい甘さが口内に広がる。
メフィストは片肘を机につき、日吉の食べる様子を見る。
日吉は飲み込みながら隣を見た。

「…まあ、普通に食べられますね」
「普通に食べられるとはなんだ、“おいしいです!さすが私のメフィストお兄様!”だろう」

これさえ無ければと、日吉はつくづく、残念だと思う。
紅茶を火傷しないように慎重に飲み、約四分の一を食べ終えた日吉はメープルシロップをかけた。
そして黙々と食べる日吉をメフィストは紅茶を片手に眺めている。
日吉はホットケーキを食べながらメフィストを見る。

「……」
「……」

二人は無言で目線を合わせる。
日吉はホットケーキに目線を戻し、切り分ける。

「大きくないか」
「気のせいです」

そしてそれをずぼっと遠慮なくメフィストの口に突っ込む。
メフィストは中途半端に入れらはみ出ている部分を、指で辛うじて押し込んだ。
二人は静かに口を動かす。

「……甘いな」
「そうですね」

メフィストは紅茶の入ったカップを持ち上げる。
皿を見ると、一口程で終わりそうな量だった。
ちょっとした好奇心からメフィストは「若」と呼んで、口を開けて見せ催促をしてみる。
メフィストとフォークに刺さっている最後の一切れを日吉は交互に見て、またメフィストを見る。
日吉はメフィストを見つめながらフォークをゆっくりと持ち上げ、自らの口内へと運んでいった。

「おい」
「……何れふか」
「フッ、クククッ、若、口の回りシロップだらけだぞ」
「……」
「そんなに頬張るからだ」
「うるさいですよ」

日吉は眉間に皺をよせながら、ティッシュで口を拭った。





いつもより 少しだけスナオな

キミとふたりで





(紅茶もう無いんですか)
(無いな)
(次カフェオレがいいんですけど)
(………熱いのか?)
(いえ、ぬるめで)




end











モドル








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