どっちも発言に眉間の力みがさらに増えた。そしてさらに迷う。迷ってたけど何か閃いた様な顔に変わって、まみどり狸を手元に引き寄せた。



「そっちでいいの?」
「いい」
「そお?じゃあ…」
「「いただきます」」



 蓋を外し、中身を混ぜる。若は麺を持ち上げたりしてまたよく見てる。(天ぷら、しなしなだな)僕はそれを見ながらうどんをすする。うどんと言うには柔らかい、カップ麺独特の触感がする。見るのは満足したのかやっと食べるみたいだ。麺に息を掛け、冷まそうとしている。



「……ふにゃふにゃしてる」
「おいしくない?」
「いや、これはこれで…」



 どうやら合格点だったようだ。今度は汁を飲もうとしているのかカップを持ち上げてそろそろと口に近付けていく。



「っ!!!」



 予想以上に熱かったのかカップを置き、麦茶を飲む。その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。



「ゃけどした……」
「猫舌なのに、無理するから」



 また麦茶を飲む。今度は氷も一緒に口内に含めて冷やしているみたいだ。半泣きの状態に少し笑ってしまった。



「ぃたっ」



 足を蹴られた。蹴った本人は知らん顔をしている。(足癖悪いんだから…)



「ん」
「ん?ああ、はい」



 まみどり狸をスススと僕の方によせる若。こっちあげるからそっちもくれってことだ。食べていた狐を渡す。



「ふーん」
「どっちが好き?」



 質問の答えを考えながら狐を戻してくるから僕も狸を返した。



「…どっちも?」
「そういえば、狸は天ぷらを後から乗せるとサクサクのままだよ」



 凄く今更ながらの情報だ。若は汁をたっぷり吸い取ってやわらかくなった天ぷらを突いてる。



「…遅い」
「ごめんね、忘れてた」



 そしてまた食べ始める。汗が滲んで髪がはりつく。扇風機は変わらずに動いている。



「若は今日、どうするの」
「雪は?」
「勉強、かな」
「じゃあ何か読んでる」
「?何かやることないの?」
「……」



 若は口を尖らせて思案しているみたいだったが、下を向きながらポツポツとしゃべりだした。



「最近、雪、忙しそうだったから………」
「…ぇ?」




 若は氷が溶けて二層に分かれてしまった麦茶をクルクルと混ぜている。(最近、僕が忙しそうだったから?確かにあんまり休みっていう日は無かったけど。今日は久しぶりにゆっくり出来る日で…………若とこんなに長時間いるのも、久しぶりかもしれない。……だから?)冗談に聞こえる様に軽く確認してみる。



「僕がいなくて、寂しかったの?」
「ちがうっ」
「何だ、違うの?」
「違う、別に、ただ…」
「ただ?」
「バカみたいに予定入れるから、」
「…から?」
「だからっ、倒れたら笑ってやろうと思っただけだ!今日は見張ってやるから覚悟しとけ!!」



 そう勢いよく言って睨み付けられた。だけど頬が赤いから、全然恐くない。(心配してくれたのかな?)もしかしたら、僕の顔はにやけているかもしれない。それに、少しあつい気もする。(午後は集中出来そうにない)扇風機は規則正しく、首を振っている。















あついあつい、初夏の陽気。

今日は特別、あついみたいだ。

それは君が、僕といてくれるから。





モドル






何だかんだ、いい息抜きになった…
今度お菓子でも買っていこうかな

ボスッ

あ、若の匂いだ……
そっか、ほとんどここにいたんだもんな

ここで若が…………
いやいや、ダメダメ!

…こんな試練が待っていただなんて、予想外だ
クソッ、一刻も早く寝てやる!
下剋上、だよね!








モドル








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