突然現れたのは、風のような。


「れっくうざん!」


急に響いた声に驚いて、目を見開いた。
目の前に居た魔物らしきものは、きゅうと目を回して倒れている。


「バカ!なにやってたんだよ!」
「っ…ご、ごめ」
「暗くなると危ないんだぞ!」


小さな子供だった。
威勢がいい、元気そうな赤髪の男の子。
怒られる度、ビクリと体が震えた。
他人には、やっぱり慣れない。

「……ん?……見ない顔だな。ラントのやつじゃないのか?」


怒った顔はすぐにきょとんと変わり、首をかしげた。
ころころと表情の変わる子だ。自分よりは少し年下だろうか。


「う、ううん。ラントに住んで、ます」


人との接し方を必死に考えながら、言葉を選ぶ。
小さな子供でも、やっぱり接したことのない人は、こわい。


「そうなのか!おまえ、名前は?」


笑顔で手を差し出された。
その笑顔が眩しくて、純粋だと思った。
握り返しながら、答える。


「あっ…えと、クロリ…です」
「クロリな!俺はアスベル。アスベル・ラ…」
「兄さぁんっ!待ってよー!」


少年が言い終わる前に、少し先の方から今にも泣きそうな声が飛んできた。
水色の、更に小さな子供だ。

「ヒューバート、遅いぞっ」
「はぁ、はぁ……兄さんが一人で走るからじゃないか!もう……あれ?その人」


似てない兄弟だなあと思った。
ぼうっと2人のやりとりを見ていると、水色の子供が首をかしげてこちらを向いた。
「クロリってんだ。ラントに住んでるらしいぞ」
「そうなんだ!知らなかったぁ…はじめまして。僕、ヒューバートって言います」
「あ、はい。よ、よろしく…」


満面の笑みで、手を差し出された。
一度に2人も接した事があまりないクロリはパニック状態ではあったが、なんとか握り返して深呼吸をした。


「そんなに怖がらなくても、もう魔物はいないぞ?」
「あっ、う、ん…さっ…さっきは、ありがと、う、ございます」

どもりながら、うつむいて礼を言う。
するとアスベルという少年は、こちらを覗き込んで唸った。


「うーん…なあお前、何歳?」
「えっ、15、です。」
「なんだやっぱり年上か!俺、11なんだ。だから敬語もなしでいいぞ!」
「に、兄さん…まず年上の人にそんな口調でいいの?」

なんだか横暴なお兄さんの袖を引っ張る弟さん。
随分しっかりした弟さんだなと思いながら、ぺこりと頭を下げた。

「あ、いいの、うん…ありがとう、アスベルくん、ヒューバートくん」


なんだか二人が面白くて、あたたかいなと思った。
なんとなくわかる。優しい子たちだ。

にっこりと笑えば、二人が照れるように慌てだした。

「い、いいって。俺たちラントに戻るけど、クロリは?」
「わ、わたしも、戻る」
「そっか!じゃあ僕たちと一緒に帰ろう、クロリさんっ」


そうして私達はラントへ戻ることになり、2人と手を繋いで歩いた。




(はじめての、知人ができました。)










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