時が止まった。
正確には、"みんな"の時が止まった。
私の時は止まっていない。
来年から地球は氷河期に入るらしい。100年ほど続くソレに対抗すべく人類は一斉冬眠政策を世界規模で打ち立てた。空気に最新の睡眠導入剤をばらまかれ、皆眠ってしまった。
だけど、私だけは眠れない。
小さい頃から薬要らずの健康体だった。
今になって恨む。だって町に出ても誰もいないんだもの。
仕方がないから学校に行くと、屋上にはひとつの影。寒さが増してきた乾燥した空気の中にくっきりと浮かんでいる。
その背中は大きくて、ハッキリとしていた。
「宮地、くん。」
すると、彼が振り替える。
あぁやっぱりそうだ。バスケ部をこないだ引退したとクラスの子がいっていたのを思い出す。
向こうは驚いたように此方を見る。きっと私もアホみたいな顔をしているんだろう。だってまさか自分以外の人がいるなんて思っても見なかった、しかもこんな近くに。
「あの、名前聞いてもいいか?」
「なまえ、です。」
鼓膜が震える。
口角が緩む。
久々のこの感覚。
誰かと会話をしている、
嘘みたいな、奇跡だ。
世界にふたりぽっち
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