「なまえさん、僕もう上がりますね」

「桃たろうさん、お疲れ様です!」


「あれっ白澤さまは…?」



そういえば帰ってこない。足りない材料があるからなんて言って数時間前に地獄まで行ったきりだ。胸の奥でもやもやした思いが脳裏を霞めた。


「またどっかに寄っているんでしょう。」

「そうですね、まったく困った人ですね…。」



そうして桃たろうさんは部屋を出ていった。一人きりになった部屋は酷く静かだ。

きっと白澤さまは今頃女の人でも連れて遊んでいることだろう。別段珍しいことでは無かった。胸の奥につっかえたもやもやは簡単には晴れてくれない。いい加減慣れたっていいのに。



そして次の日は決まって頭痛に襲われる。大抵ぐったりとしている白澤さまを見るたびに馬鹿だなと思う。物理的な意味で後で辛いのは自分なのだからこんなのやめればいいのに。

でももっと馬鹿なのは自分だ。遊びだとしても白澤さまに触れてもらえる女の子たちが羨ましいなんて。そんなことを少しでも思ってしまう。そして思っていても何も踏み出すことが出来ないのは精神的に馬鹿だ。


あぁ、私は白澤さまに染み付いたあの香水の匂いに明日も苦しめられるんだろう。






馬鹿はどっち?



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