禍々しい気を纏った、元凶の居城。
 兵たちの屍の道を経て辿り着いた最奥。

 魔王は想像以上に凶悪で、惨い。


「貴様の覇道、叶えてやろう」


 蛇を思わせる鱗をびっしりと蓄えた手で、高く掲げるもの。
 黒を帯びた紅だらけの、狐色。
 艶をなくし、幾房か肩に落ちた絹糸。
 紅の海に沈む、鉄扇。

 覇道の、代価。

 薄く開いた唇が、うわ言のように呟いた。


「叶えろ」


 対を成す二つの刃が、鈍く光る。


「叶えてくれ」


 元来、人の言うことを素直に聞く性質ではなく。
 お前に言われるのならば、尚更。

 口の端が緩む。

 ――覇道?


「そんなもの、」


 今まで積み上げてきた全ての奏でを、滅するのみ。
 迷いなど微塵もなく。





 英雄なんか要らないから、どうか返してはくれないか


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -