※友好会話3段階目を聞く前に書いたものです
其れは、年齢に似合わぬ若々しさで。
机挟み書を読みふけるは、歳隔てた日の本の男。
指でつつけば、ぷに、と柔らかく。
「──賈ク?」
不意の行為に顔を上げ。
頬を押さえて、瞬きする傾き烏帽子。
名を形づくる声に、若きにはない凪。
自らを年寄りと称する謀神。
「元就殿は若いと思ってね」
「そんなことはないさ。一度戦に出るだけで、体が悲鳴を上げるよ」
苦笑混じりに肩を竦めるのは謙遜。
武は劣らず、知は遥かに優れ。
老いてなお、若く在るための方法。
机上に両肘ついて、尋問の体勢。
「若さの秘訣があるのなら、是非教えて欲しいんだがね」
「秘訣? ……うーん……」
顎に指当て、首を捻り、ぽつりぽつりと。
早寝早起き、食事への気配り、禁酒。
全て、ごくありふれた事項。
穏やかな面持ちに、目を眇め。
「…それだけにしちゃ、若すぎる気がするんだが。他には、ないのか? 例えば、………生き血を啜るとかさ」
「………」
読みかけの書を、ぱたり、閉じて。
落ちる溜め息、消える凪。
「そんなに、知りたいのかい」
「まあ、ね」
「…そこまで言うのなら、教えてあげよう」
ひそやかな囁きと小さな手招きに。
顔寄せれば、両頬を攫われる。
驚きに上がる小さな声を、唇が奪い。
数瞬の後、洩れる吐息は湿り。
「……こういうことさ」
「……………なるほど」
「……知ったからには、私が若く在るために、協力してくれるんだろう、賈ク?」
蝋色の瞳逸らさず誘う老獪。
垣間見えた妖艶に、儘、頷いて。
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