ぴったり当てはまる言葉が見当たらない。
この感情は。
音もなく横に滑る障子。
明かりのない寝室。
中央にひかれた布団。
枕の白に落ちる狐色の絹糸。
月の光が眠る人の頬に反射して、眩しい。
その体の上に乗り。
細い首に両手を。
「…何の真似だ」
小さく、掠れた抵抗。
気管は殆ど塞がれている。
「本気だ、私は」
答えは、首にかけられた手。
うっすらと笑いを象る唇。
「ならば、俺も」
容赦なく。
骨が軋む音。
「み、つ、なり」
「そ、ひ」
一度だけ、互いを呼び合う。
そこに混在するのは、苦しさ以外の。
手が緩むのは同時。
耳が痛くなるほどの静寂。
お前を殺したいと思うのと同じだけ、お前に殺されたいと思ってた