※現パで同棲している設定です






「君が、悪い」
 真上から注ぐ、半ば呂律の回らない非難の声。真下には柔らかなソファの感触。突然の出来事に、常に冷静を保つ頭脳が珍しく動揺するのを認識しながら、その原因を考える。
 今日は、意中の人にチョコレートを渡し、想いを打ち明ける年に一度の機会。故に、家事を一手に担う年上の恋人に、愛と感謝を伝えるためにチョコレートを贈って。
「お酒が入ると、箍が外れるから、いつも、飲まないでいたのに」
 ソファの側、テーブルには包み開かれた贈り物──ウィスキーボンボン。恋人が甘いものを好むことを考慮し、洒落っ気込めて選んだ其れが、最大の失策。
 ふらり、酔いを含んだ手がテーブルに伸びて、一つ、瓶の形をした原因を摘む。半分齧れば中から飴色の蜜が溢れ出て、指先から手のひらに伝う一筋をゆるり舐め上げる。肌を這う舌の朱、蝋色の瞳に映る自身は、酩酊にゆらゆら、揺らいで。思わず呑む息、また一つ、指先が捕らえる蠱惑の甘味。
「賈クも、食べるだろう?」
 柔らかくも抗い難い誘いにただ頷き、近づく其れに口開けども。ひらり交わされて、呆気にとられる間もなく、降るは口づけ。
 共に流れ込むあたたかな甘さと、咥内焦がすウィスキーに焼き切れる思考の回路。唇啄む恋人の頬引き寄せ、芳香の残滓求めて舌を絡めれば、低く甘えた声洩れて。
「あんたが、わるいんだからな」
 湿った吐息を首筋に這わせば、くすりと、小さな笑みが応え。胸元を緩やかに撫で下ろす手のひらと、夜の色孕んだ瞳と。
「ちがう、わるいのは、きみだ」
 体擦り寄せる恋人に、来月の贈り物を先取りする心地になりながら。儘、服の裾へ手を忍ばせて。


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