うだるような夏の、ささやかな安らぎの場所。
時折吹く涼風に騒ぐ木々の若葉。
新緑から垣間見える汚れなき青。
「日当たりの暑さが、嘘のようだな」
「ああ」
穏やかな相づちは上から。
新緑から目を少し移せば、膝を借りた狐色。
「ここだけ、まるで別世界のようだ」
「ああ」
「これだけ涼しいと、帰るのが面倒になる」
「同感だ」
さら、と栗色を梳いた細い指。
その繊細な感触が心地よく、目を閉じる。
「少し、眠っていいか?」
「ああ、構わぬ」
瑞々しい緑の音。
柔らかな膝の上。
微睡んだ先には、きっといい夢が待っている。