「……三成」
「………」
「……三成」
「何だ、これはやらんぞ」


 風呂上がりの体温ですぐ溶けそうな。
 小さなカップアイス、ブルーベリー味。


「存外ケチだな、三成」
「ケチではない。……このアイス、1個300円もするのだぞ? 誰がやるか」
「………」


 黙々と食べ続ける口元を。
 じっと見つめている。


「食べにくいのだが、曹丕」
「………」
「ああもう分かった! 一口やるから!」
「最初からそうすればいいものを」


 スプーンに一口分。
 どこか間抜けに口を開けている男。
 口元まで、近づけてから。


「……やっぱり、嫌だ」


 急なUターン。
 閉じた口は空振り。


「……話が違うぞ」
「気が変わった」
「……」


 幸せそうに頬張る横顔に舌打ち。
 ふと、思いついた妙案。


「……おい、三成、」
「何だ、絶対にやらんぞ、そう、」


 そこにある冷たさが、溶けないうちに。
 強引に重ねた唇。
 押し入った口内。


「……っは、そうひ!」
「流石、高いだけある。……美味いな」


 溶けて唇から顎へ伝ったぬるさを拭う。
 舌なめずりし、目で示すのは。


「さて、もう一口欲しいのだが、三成?」
「っ、自分で食えばよかろうっ!」


 力の限りに押しつけられた、
 小さなカップアイス、ブルーベリー味。


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テーマ「人外ファンタジー」
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