今日の石田三成は過激派だった。
「――愛している、曹丕」
と急に口走って、己の寝そべるソファにダイブ。
どっちが襲う方なのか分からないような体勢。
完全に組み敷かれ、挙げ句頬に唇まで落とされた。
「三成、」
「何だ?」
「気でも狂ったか?」
「狂ってなどいない。俺はお前を愛していると言ったのだ」
手を伸ばすのは襟元。
ボタンを上から一つ、二つと外していく。
「……三成、本気、か?」
「………………」
「……三成?」
「………………ぷっ、」
普段なら決して見ることの叶わない、間抜けた顔。
はだけた胸元。
それが、死ぬほどおかしい。
「ふ、はは、おかしすぎる、何だ、お前とあろう者が、そんな顔、ふ、ははははは」
「……何の真似だ」
「今日はエイプリルフールだ。……俺が貴様を抱くわけなかろう?」
部屋の隅に下がった日めくりカレンダーに目をやれば。
確かに、四月の一日。
「ああ、楽しかった。大収穫だ」
笑いすぎて涙目になりながら上から退いていくのを、腕を掴んで引き止める。
「……私にこのようなことをして、タダで済むと思っているのか?」
「……な、何を、」
「お前は抱くのではなく、抱かれる方だからな」
「おい、ちょっと、待てったら、曹丕っ!」
背に、柔らかいソファの感触。
降ってくる意地の悪さ最大級の笑み。
「待てと言われて、待つ奴がいると思うか?」
ああそうだ、これも冗談だ。
今日はエイプリルフールだから、嘘だ。
という願いも虚しく。
足腰が立たなくなるどころか、口もきけなくなるほどいいようにされたのは、本当のこと。