夕暮れ時、明かりをつけていない部屋は薄暗い。


「曹丕、」
「何だ」
「大好きだ」
「………………、は?」


 ふわりと、後ろから降りてくる狐色。
 肩に顔をうずめてそんなことを急に言うので、曹丕は眉間の皺を増やした。


「何だ、いきなり」
「いや、別に、理由はないが」


 首に腕を巻きつけ、顔を覗き込んでくる三成と、至近距離で目が合う。


「大好きだと言われると、何だか、幸せにならないか?」
「別に、ならないが」
「この冷徹男」


 むぅ、と不満げに口を尖らせるので、ふと湧く悪戯心。
 少し首を伸ばせば、重なる唇。


「今更そんなことを言われなくとも、幸せだ」
「……………っ、」


 もう一度唇を合わせようとしたのは、呆気なく拒絶され。


「も、もう二度と言わんっ!」


 肩を怒らせ台所へと去っていく三成に、曹丕は小さく、


「私も、大好きだ、三成」


 と囁いておいた。


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