「っ、くしゅん」
寒さを訴える小さな悲鳴。
明かりもまばらな夜道、それは暗闇に吸い取られて消える。
「寒いのか?」
「ちょっと」
二人並んで。
歩みを合わせながら。
三成が白い息を吐き、真っ赤な手をこすり合わせる。
曹丕もまた同様にし、小さく笑い合った。
ここのところの冷え込みは急なものだ。
日中でさえ、身を刺すような冷気に身が震えてしまう。
もうじき、だろうか。
「……あ、」
「どうした曹丕?」
何か思いついたような声を上げ、立ち止まる。
かと思えば。
「すぐ戻る」
告げて、来た道を戻っていってしまう。
わけも分からず取り残される三成、電信柱の下。
(何か、落とし物でもしたのか?)
猛ダッシュで離れていく背に、自分なりに理由を乗せてみる。
曹丕が落とし物?
まさか。
数分としないうちに。
小さな袋を携えて戻ってくる。
「いきなりどうした、」
「これを」
がさりと取り出すのは。
ほこほこと湯気を上げる中華まん。
「これで、暖まろう?」
「そうひ、」
「ただし、半分ずつ、だ」
長い指が、中華まんを綺麗に半分にする。
中からは溢れんばかりのあん。
「好きだろう、みつなり」
「ああ、好きだ」
口の中に広がる甘さと共に。
鼻先に、白い光。
「雪?」
「そのようだな」
夜空を見上げれば。
汚れない、花びらのような、天からの贈り物。
「急ぐか」
「ああ」
どちらからともなく、手を取り合って。
二人の住まいへ、帰路を急ぐ。