「あなたがそんなに嘘つきだとは、思いもしませんでしたわ」


 合肥新城から望む、パノラマのような夜空。
 天下一統を果たした夜。

 星の瞬きは格別美しく見える。


「嘘つき?」
「ええ」


 即、首肯する妻。
 杯へ酒を注いでいく。

 曹丕は眉間の皺を一本増やした。
 常にたおやかな彼女が、明らかに己を批判するなど。

 なみなみと注がれた透明な水面に、顔を映す。


「何故?」
「何故って、」


 月光の青白さの中、妖艶に笑い。
 視線は遥か彼方、夜空の向こうへと。


「私の他に、天下を差し上げる方がいらっしゃるでしょう?」


 ですから、私は、その半分で結構です。


「聡いな、そなたは」


 杯を、真ん丸い光に重ね合わせ。
 脳裏に思い浮かべるは、大一大万大吉。


「この天下の半分、お前に、


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