それは時々見る夢だ。

 鉄扇を手に、荒野に立っている。

 地面に突き刺さる、刃こぼれした刀。
 紅の海に、死屍累々。

 全身生臭い。

 足が重くて下を見る。
 群がってくる手という手。
 土色の。

 強く、引きずり込まれるような感じがして。

 いつもそこで目が覚める。

 飛び起きる中途で、額に思いきり何かがぶつかった。


「………寝ても覚めてもうるさい奴だな」


 夜の闇の中、枕元にいるその人。
 額を押さえ、低く唸るような声。
 眉間の皺、いつもの三割増。


「そうひ」
「うなされるなら、もう少し静かにしろ。隣の部屋の私の身にもなれ」
「…フン、見かけによらず細い神経だな」


 血の気が引いた肌。冷や汗。
 震える拳。


「どっちがだ」


 拳を解いて、そっと手を重ねる。
 見開かれ、こちらを見るのは色素の薄い瞳。


「貴様、気でも狂ったか?」
「黙れ。とっとと寝ろ」


 膨れながらも素直に従う。

 額に触れ、乱れた前髪を掻き上げる手のひらが、


(あたた、かい)


 柔らかな感触が降る前に、心地よい眠りへと。





 どうしてお前はいつも、俺の望むものをくれるんだろうな


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