筆を手に。 毛先を墨汁で潤し。 古い歴史書。 不遜この上ない男の肖像画。 その上に広げていく。 鼻の下に髭。 頬にぐるぐる渦を巻き。 長い睫毛を付け足し。 最後に、眉間の皺を。「……っ」 黒が掠れ。 するりと手を離れる筆。 時折、見せたように。 ひどく分かりづらく。 持ち上げた口元。 視界が曇る。「……曹丕」 乾ききらない墨汁が。 新しい水分を得て、滲む。 一千年と三百年あとも、