黒の空間と白の空間。
 その境目に立っている。


(…ここ、は…?)


 黒の空間へ一歩、踏み出そうとした時。
 どこからか己を呼ぶ声がした。


(……だれ、だ?)



 いくな



 不意に、左手を包む温かさ。
 振り向けば、白の空間の果てに、光。


(…おまえ、なのか?)



 みつな り



「…わかった、」


 黒の空間と決別し。
 眩い光の方へ。


「今、行く」





 重い瞼を開けば。
 左手を包んでいる大きな手のひら。


「みつなり、」
「…そうひ」

「手当ての途中で、気を失って、」
「ああ」

「一晩、目を覚まさないから、」
「…ああ」

「…もう、……二度と、」
「……うん」


 肩を僅かに震わす蒼の頬に。
 そっと手を添えて、小さく、願いを。


「……そうひ、おれを、つよく、」
「………っ、」


 魂ごと掻っ攫うような。
 骨も軋む抱擁。
 肩元に、静かに顔を埋め。


「…そうひ、俺、な、





 夢見た朝 僕はたまらなく倖せになるのだと君に告げました


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -