「たまには、いいだろう?」


 蒼が視界の隅で翻ったかと思えば。
 小さな包みを手に提げている。

 執務も一息入れ、二人、縁側。
 盆で湯気を立てる茶碗、二つ。


「何だ、これは」


 包みの中の串を一つ手にし、目の前まで持ってくる。

 上から、白、桃、蓬。
 完璧な球ではなく、所々でこぼこした形。


「作り方は、甄から教わった」


 相変わらずの仏頂面にも、少しの満足の色。


「どうりで不格好な団子なわけだ」
「つべこべ言わずに食え」
「毒は入ってないだろうな」
「生憎、それほど悪趣味ではない」


 言い終える前に、すでに一番上の白を頬張っている。
 やや間があって、小さく喉が動いた。
 余韻を味わうかのように、茶を一口。


「美味い」


 そうか、と返すのが一拍遅れ。

 うっすらと微笑む横顔が、


「ならばいい」


(魏の皇帝となる男の作った団子、か)
(もう一度、甄に教えを請おう)


 緩んだ口元を見届けて、次の桃色を。





 ただ貴方さえ笑ってるならこの命も惜しくはないから


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