「……それで、進軍経路についてだが、」


 天幕の内、二人、机を挟んで。
 細い指が淀みなく滑る地図の上。
 魔王の領地へと侵攻するための策。


「お前はこの道を、俺はこちらの間道を行く」
「それが最良だな」
「当たり前だ。…それから、他の隊は、」


 凛とした声で。
 次々と紡がれていく戦絵図。

 頭の中で思い描きながら、頷き。
 ふと、顔を上げる。

 頬に沿うようにして流れる、狐色の艶。
 よく動く薄い唇。


「………曹丕?」


 気配を感じ、こちらを見て首を傾げる。
 その、一動。


「……いや。お前はいつまで我が軍にいるのかとな」
「邪魔などとは言わせぬぞ」
「安心しろ。露ほどもそう思ったことはない」
「お前の覇道をやらを、見るまでだ」


 机上、同じ高さで視線が合い。
 狐が不敵に、笑う。


「見せてくれるのであろう、曹子桓?」


 返事の代わり、頬に添えた手のひら。
 瞳逸らさず、迫る。


「な、何だ、曹丕、」
「…………」
「ち、近いぞ、お、」


 遮られた動揺。
 頓挫した軍議。





 友情にすら欲情


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