「興味が、あったのだ、」


 膝の上に頭を預け、途切れ途切れに話し出した。
 押さえた胸元に、深い袈裟斬りの傷。


「文献に書いてあるお前と、実際のお前。何が違って、何が事実なのか」


 急に咳き込んだかと思えば。
 死期を告げる大量の紅。


「文献など、案外に、あてにならんものだな、っ」
「三成、」
「目つきは悪いし、口も悪いし、不遜だし、何より、人の話を聞かぬ」
「喋るな」
「誰が、貴様の言うことなど、聞くか、」


 常と同じ、一々癪に障る口ぶり。
 ただ、目にだけは少しの力もなく。


「何故、私を、庇った」
「庇った? ……そんなつもりは、毛ほどもない」


 粘り気を帯びた紅を纏った手が、頬を撫で。
 憎たらしいほど、愉快そうな笑み。


「汗を、かいているぞ、曹丕」
「黙、れ」
「黙らん」


 次々と流れる汗が、細い指先に攫われ。

 頬を染める温かい紅。
 指先を潤す温かい雫。


「そんな顔をするな、そぅ、ひ、」





 いつもと変わりない皮肉めいた笑みで笑ってくれよ


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