「………お前、本気で言っているのか?」
「当たり前、だ、」


 矜持も何もかもかなぐり捨て。
 足元に縋りつき、こちらを見上げる色素の薄い瞳。

 罪人が命乞いするような姿。
 けれどその整った顔を蹴ることもできずに。


「私を、血も涙もない人間だとでも思っているのか?」
「違う、そうじゃない、っ」
「ならば何故、私に頼む」
「……お前が、いいから、だ」


 顔をくしゃりと歪め。
 瞳に水膜を張った懇願。


「いつか離れるなら、いっそのこと、」


 それは自覚しているのか無意識なのか。
 眉間の皺を増やし、舌打ち一つ。


「……立て、三成」
「曹丕、」
「ならば望み通りに、してやろう」


 長い指の骨を鳴らし。
 立ち上がったその首に手をかけ、壁に叩きつける。


「…そ……ひ……」
「これで、満足、か?」


 頷いた首が、そのまま力をなくす。
 手を離せば、足下にくず折れる。


「…知っているか、三成よ」


 纏った蒼を解き。
 呼吸を止めた体を覆う。


「お前がそう思うのなら、……私もまた、然りであるのだと」





 穢れたこの手で与える終わりを 親愛なるきみへ


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