空が、蒼いから。
珍しく思い出し笑いをした。
空想とは正反対にいる男の、空想じみた呟き。
「そんなこと、できるわけがないだろう」
「何故だ」
あんな子供のような膨れっ面。
あの時が最初で最後だった。
「人は、死ねば自由だ。どこにでも行ける」
体験したこともないのに、完全断言。
(貴様がそう言うから、)
本当に、できるのではないかと。
佐和山城の、粗末な縁側。
城主が足をぶらつかせている。
傍らに歴戦の鉄扇。
空が、蒼い。
風が、吹く。
あの時とよく似た。
「久しいな」
縁側に一つ増える人影。
背中に感じる程よい重さ。温かみ。
「本当に、来たのか」
「ああ」
珍しく、その男も思い出し笑いをして。
耳元で囁かれる空想。
「だから言っただろう、
会いたいなら、
会いに行けばいい。