立つのもままならない己が恨めしい。
気管から溢れそうになる咳を抑え。
(絶対安静など知ったことか。)
皮と骨の体は、鎧も蒼も纏えず。
ゆったりとした衣一枚翻し、庭へ。
天井の色ばかり見ていた目に。
自然の緑はひどく鮮やかで。
(眩し、い)
目を細めに細め。
折れそうな足を無理矢理に動かし、歩く。
名も知らぬ草花を横目に。
寄りかかり腰を下ろす木の幹。
息を整えるため、大きく空気を吸えば。
途端溢れ出す咳に体を折り曲げる。
(何だ、)
色が、足りない。
この視界にあるべき色が。
「一国の帝とあろう者が、無様だな」
どこからか美しく、冷たい声。
瞼を過ぎった姿。
(紅、か)
それもとびきり鮮烈で、美しい。
胸を撫でさすって咳を抑え。
木の梢の間から、青を望んだ。
乾いた唇で、色の名を。
「み、つな、り」
願った祈ったそうして望んだただただ静かに逝く日を 想った