「貴様は、そう思わないのか?」
「何が」


 寝台からの下り際。
 落ちている蒼を拾い、白い体に一枚羽織る。

 戸を貫いて差してくる明るみ。
 もうすぐ、大地に朝が告げられる。


「戦いは、終わったのだ」


 寝台から一番遠い壁際。
 そこで鈍く煌く二つの銀。


「もうすぐこの世界も元に戻るだろう」
「……つまり、何だ」


 二つの銀を手にする、蒼い、華奢な背に。
 身を横たえたまま訊ねる。


「分かっているだろう、曹丕」


 寝床の白に投げた銀。
 今まで、いくつもの奏でを滅してきた、剣。

 体を起こしその重みを確かめる人に。
 ずいと詰め寄り。
 唇だけでひどく薄く、笑う。


「なあ、曹丕。俺には堪えられない」


 紅く、所有印を施した首筋。
 冷たい銀を当て。

 囁くは耳元。


「ああ、三成。私にも、堪えられない」





 どうか俺を始末してくれいずれ訪れるさよならの 前に

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