「…何故、このようなことをする?」


 牢獄の中。
 響く問いかけと鎖が擦れる音。


「何故とは、何だ?」


 見下す蒼。
 刃の瞳は異様な冷たさを湛え。


「牢にはりつけにされるようなことをした覚えはないが」
「あぁ、」


 輪郭を撫でていた長い指。
 顎を掴み、乱暴に、持ち上げる。


「穢れるからだ」
「……何?」
「他の将とお前が話すのを、何とも思わないと思うか、この私が」
「曹丕、」
「一つ、言っておくぞ、三成」


 吸い上げられた呼吸。
 洩れた声は、響く前に飲み干され。


「お前は、私だけを見ていろ」
「そぅ……ひ……」


 余韻も何もなく離れ。
 牢に錠をし、遠のく足音。


「…あぁ……そう、か……」


 たった数秒、熱を与えられただけで。
 ぐずぐずに溶かされてしまった体。

 恍惚とし、目を細め。
 何もない天井を仰ぐ。


「お前がそう言うなら、こうして縛られるのも、……悪くない」






 愛し過ぎた(抑えられたらどんなにか幸せだったろう)


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