「……今日は、どういった風の吹き回しだ?」
「べ、……別に、何も、ない」


 しどろもどろに背から答え。
 蒼の上、首へとぎゅっと回している腕。

 肩に埋まっている狐色の髪。
 呼吸するたび揺れるのがこそばゆい。


「……なあ、曹丕」
「何だ」
「まだ、書き物は、終わらぬのか」
「生憎と、時間がかかる」
「…そう、か」


 沈んだ短い返答。
 後、二人の間に落ちる沈黙。

 書簡に淀みなく走る筆と。
 穏やかに繰り返される呼吸と。
 そこにある音は、二つだけ。


「……おい、三成」
「何だ」
「それほど、私が恋しいのか?」
「ちっ、違う、阿呆っ、」
「ならば、こうも私にくっついている理由は?」


 言葉の端々に意地の悪い笑みを乗せれば。
 後ろで急沸騰している男の顔がありありと浮かぶ。

 案の定、後頭部を思いきりはたかれ。
 ますます重さを増す、背の温かみ。


「俺は、っ、





 何かしてほしいわけじゃなくて、ただあなたと生きていたい


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