町中を引き回され。
 いくら罵詈雑言を浴びても。

 ただ凛と、前を見据えている瞳。
 狐色の髪が、ぱさぱさと風になびく。

 白い手首をきつく戒める縄。
 鬱血の紫。

 まだ、力は入る。
 鉄扇があれば。

 大一大万大吉は、まだ。

 妙に喉が渇く。
 水を求めた代わりに、

 柿が。


「体の毒になる」


 断った。


「最期に、望みは」


 目前に迫る白刃。
 唇を、開こうとして。


「何も」


 刃が、空気を引き裂く音。

 蒼を、見ていた。

 昨日のことのように、鮮烈に。

 ゆっくりと翻り、こちらを。


「そぅ、 」


 暗転。





 いつかまた会える日なんて、そんなのは来ないけど


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