大一大万大吉の華奢な背を見送り。
 視界から完全に消え失せた時。

 世界は揺れ動き始めた。


(三成、)


 全てを憶えている。
 死ぬ瞬間まで。

 そう誓った、


 はずだった。





「甄」
「何でしょう、我が君」


 愛する妻の膝の上、寝返りをうつ。
 果てなど見えそうにない、澄んだ青空。

 覇道もまだ、道半ば。


「最近夢を見るのだ」
「夢?」
「決まって、狐色の髪の男が出てくる」


 男、と言ったが、女かもしれない。
 肌は白く、整った顔立ち。

 華奢な背には、何か、文字が。

 大 一  大   万

 無意識にまた、手で拳をつくっているのに気づく。
 いつからかの癖。


(手放したく、なかったのか?)





 何かを忘れているような気がしている


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