空が白む。
一夜を過ごした城の、門を挟んで。
内と外。
妻と同志は、会話の聞こえない場所まで下がっている。
真正面から向き合う。
寸分たりとも目を逸らさずに。
「今更、話すこともないがな」
「確かに」
会話が途切れれば即ち別れ。
最後、くらいは。
「お前が、」
「ん?」
「お前が笑わねば、覇道を成しても意味がない」
それは、いつしかの質問の答え。
「笑わせてみろ」
どちらからともなく、握った手。
固く、強く。
「さらばだ」
「じゃあな」
とても、戦友などとは呼べたものではないから。
一人は三国の世へ。
一人は戦国の世へ。
一度手を離し、背を向けたら。
もう振り返ってはいけない。
手のひらの温もりと、共に歩んだ歴戦の記憶を。
忘れないように。
未来永劫。
つないだ手を放したくなんか、なかったのに