そんな光景を見せつけられたら、堪らない。
涼州からの帰路、今にも落馬しそうな心地だった。
少し前で上下に揺れる、覇道の後継者の背。
冷酷なその空気が、和らいでいる。
容易く分かってしまうほどの己の位置。
唇を噛んだ。
――我が君と一緒なら、恐れるものは何もありませんわ。
何も言葉を返すことはなかった。
ただ、背に回り抱き寄せた腕に。
これが夫婦なのだと。
(俺、は、)
口に出すことなど到底できずに。
語尾を少し、上げるようにして。
今まで知る由もなかった痛み。
ぎゅう、と胸元を掴む。
この世界は歪んでいる。
けれどもっと歪んでいるのは、他でもない。
つ、と顎へ伝っていくのは血の、
それでもお前は愛してくれるのか