そんな光景を見せつけられたら、堪らない。
 涼州からの帰路、今にも落馬しそうな心地だった。

 少し前で上下に揺れる、覇道の後継者の背。
 冷酷なその空気が、和らいでいる。

 容易く分かってしまうほどの己の位置。
 唇を噛んだ。


 ――我が君と一緒なら、恐れるものは何もありませんわ。


 何も言葉を返すことはなかった。
 ただ、背に回り抱き寄せた腕に。

 これが夫婦なのだと。


(俺、は、)


 口に出すことなど到底できずに。
 語尾を少し、上げるようにして。

 今まで知る由もなかった痛み。
 ぎゅう、と胸元を掴む。

 この世界は歪んでいる。
 けれどもっと歪んでいるのは、他でもない。

 つ、と顎へ伝っていくのは血の、





 それでもお前は愛してくれるのか


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -