藍の裾野が明るむのをじっと見ている。
どこにいても、空は一つに繋がっているのだと証明するように。
素直に称賛できる日の出の頃は、どの地で見ても美しい。
――忘れるな。
大一大万大吉。
バチンと鳴るのは、掌中の鉄扇。
――いくら時を隔てようとも、
音と共に手に残る、ひりひりとした衝撃。
拳をつくって力を込めれば、すぐに消えてしまう。
それと同じで。
フン、と鼻で笑う。
――私は、ここに。
どこに?
別れ際に渡された貴様の温かさなど。
(ああ、日が、)
また、昇ってしまう。
貴様、の、いない。
「殿」
バチン。
温まり始めた空気を劈く。
「出陣の用意が、整いました」
一杯に広げた扇で、顔を隠す。
「今、いく」
あなたがいないのに、それでも明日は始まってしまう