覇道は呆気なく、潰えそうでいる。

 “曹丕隊壊滅”

 報を聞くなり、足が勝手に動いていた。

 見るに堪えない紅の海は、遠目にも目立ってしまう。


「敵を、」


 討て、の代わりに吐き出される生命の源。

 刻々と温かさを失う体を抱きかかえる男。
 紅と彼の白い肌のコントラスト。


「行け、私はもう」
「嫌だ、」


 紅を洗い流す、幾筋もの澄んだ雫。
 きれいだ、と言おうとして。

 彼の後ろに振り下ろされる閃きを見た。

 容易く胸を貫く銀の切っ先。


「そうひ、」


 顔に降ってくる温かい雨。

 笑いながら泣いていたのか。
 泣きながら笑っていたのか。


「一緒が、いい」


 今更、言いたくなる戯言。


「みつなり、」


 軋む腕を伸ばし。
 この世最後の抱擁と、


「あいして、いる」





 叶うならば共に。叶わぬまでも側に。


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