道なりに見たことのない造りの家があるから、立体機動を使えないこともないけれど・・・。
一般人が多すぎて、どうにも気が引けてしまいます。
それに建物の高さも無いことから、移動中に人に当たってしまいそうで危ないようにも思えます。
仕方なく、一度屋根に上り、そこを伝って走ることにしました。
この町は夜でも明るいところは明るく、人通りも多いです。
見たことのない服と髪型。
そして男性は、腰に何か細長い棒を二つほどぶら下げていました。
兵団の制服を身に纏っている人は一人もいません。
臭いの元は、そんな人や明るさから離れた薄暗い閑静な場所にありました。
そして見えたのは、巨人ではなく人間です。
けれど、白髪で目は赤く染まり、甲高い声で笑っている姿は正直まともには思えません。
黒い柄の先からは、先が尖った剣がついていて。
彼らはそれを何かに振りかざし始めました。
咄嗟に私は彼の目の前に入り込むことに成功して、抜いた二本の剣で彼の攻撃を防ぎました。
『力っ、強っ、・・・・・・ぅらぁ!!!』
腕の骨がミシミシ言ってるのを身体で知りながら、振り絞った力で相手を薙ぎ払います。
「ひひ、血だぁ、血をくれぇ・・・」
『ち?チ、・・・血っ?!』
狂気を孕んだ瞳は救いようが無さそうだし、ここで生け捕りにしたとしても、場所が分からないので兵団に連れることすら出来なさそうです。
かと言って、このまま多少の傷をつけて気絶させても・・・、今度こそ本当に誰かを殺してしまうかもしれません。
第一、血を欲しがる時点で人間でも無さそうな気がします。
此度の件は、上に報告して、後でこのモノたちの種を調査すればいいでしょう。
とりあえず今は、申し訳ありませんが・・・、
『死んで、くださいっ!!』
職業病でしょうか。
巨人を倒すときのように直ぐ様後ろへ回り込み、私はうなじを削ぎ落としました。
しかし、人間と同様の作りだったらしく、上手い加減が出来ず。
彼にとっては致命傷だったようで、バタリと前に倒れていきます。
ふぅ、と息をはいたところで、私は死体越しに人を見つけました。
空色の服に身を包んだ、二人の男の人。
『あの、お怪我はありませんか?』
見たところ、彼らは血を出していなさそうですが、一応確認しておきたいのです。
剣を装置に仕舞いながらゆっくり近づくと、一人の男の人が逆に剣を向けてきました。
アレ。なぜでしょう。
「ねぇ君、」
『は、はい!!』
「何者?」
『えっと・・・、私は、調査兵団の・・・、』
「とりあえず屯所まで来てもらうよ」
『え?』
あの、自己紹介の途中なのですが・・・・・・。
ニコリと笑ったその笑顔の奥に、殺気が満ち溢れていました。
隣のハンジさんと同じように髪を結んだ方は、ため息をつきながらも私に向かって同様に殺気を飛ばしていました。
リヴァイが、時おりエルドくんやオルオくんたちに飛ばすものと似ていて。
彼の声が、無性に恋しくなったのです。
まず初めに。
やはり確認しておきたいのは、
(あ、あのっ・・・)
(何?)
(リヴァイ・・・じゃなくて、──こ、ここは壁の外、ですよね?)
(は?)