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「#年下攻め」のBL小説を読む
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#4

「エルヴィン団長っ、此方にも見当たりません!!」
「同じく!!」
「団長、東のほうにもやはり・・・」

「・・・・・・そうか」

俺は眉間を押さえる。

四方八方に散らせた部隊には、朝焼けが見え始めた頃に戻れと言ってあった。
だんだんと闇が薄まってくると、命令に従った兵士がチラチラと戻ってくる。

最後の方まで探し続けるであろうペトラやエルドの姿を捉え、此処までかと腹をくくった。

「あとは、リヴァイか・・・」

頼みの綱は命令を聞いていないだけあって未だ戻ってこない。
ペトラは顔を覆ってサユキの名をひたすら呟いていた。

朝方には門を明けるように言ってある。
そろそろ潮時だと、優秀なうちの兵長も悟ったようだ。
探しに出たときと同じように馬だけが多い状態で森の中から抜けてきた。

「リヴァイ・・・」

俺の顔を一瞥しても、いつもと変わらぬ表情と態度。

「帰るぞ」

自らそう進言すると、先陣を切って二匹の馬と共に壁の方角へと進んでいく。
その物言わさぬ行動は、これ以上のサユキの詮索の拒否・無意味を示唆していた。

いくらか小さく見える彼の背中に、ついにペトラは泣き崩れる。

「やっ、サユキ・・・っ、どうして・・・っ、」

ボロボロと涙を落とす彼女の震える肩には、エルドの手があった。
オルオやハンジは、じっと森を見据えている。

サユキが巨人に喰われる光景は、目に浮かばなかった。
それを目の当たりにしなかったことが、不幸中の幸いなのかもしれぬ。


「・・・リヴァイはこれから無茶するかも知れないから、・・・ちゃんと見といてくれ。
 あいつを生かすのも殺すのも、お前しか出来ないことだ、サユキ」

こんなことを言われたら、きっとサユキは何時ものように凛々しく返事をするだろう。
そして、リヴァイの隣に並び、彼の使わなすぎる口角の筋肉を運動させてやるのかもしれない。

俺は右の手だけを心の臓に宛ててから、ペトラに「行くぞ」と声をかけ踵を返した。








################

新選組の皆様にお世話になってから、数週間が経過しました。
時が経つのは早いものですが、チヅルちゃんという小柄な可愛らしい女の子とも仲良くさせてもらっています。

「さゆきちゃん、そっちは終わりましたか?」

『はい、終わりました』

服の皺を伸ばして、今日の洗濯は終わりです。
手の甲で額の汗を拭う私に、チヅルちゃんはエプロンで手を拭きながら近づいてニコリと微笑みました。

「それじゃあ、少しだけ休憩にしましょうか」








まだ勝手のわからないお茶の淹れ方を横から覗いて勉強していると、フ、と影が被りました。
振り向くと同時に、頭三つ分ほど上から陽気な声が降ってきます。

「千鶴ちゃん、僕にも淹れてくれないかな」

「沖田さん!はい、わかりました!」

チヅルちゃんは頼み事をされるのが嬉しいというなんとも良い子です。

でも、頼られることが喜びに変わるのは確かに一理あるかもしれません。
ペトラちゃんもオルオくんもエルドくんも、リヴァイに何か頼まれたら犬が尻尾を振るようにすぐに首を頷かせます。

私にはあまり頼ってくれないのですが・・・、だからこそ、稀に下される頼み事や命令が嬉しくも思えるのです。

リヴァイ・・・・・・、ちゃんと寝ているのでしょうか・・・。
あんなに体力を使うのに少食だし・・・だから背が伸びないんですよ。

一度彼のことを考えると、そこに嵌まってしまうらしい私に、チヅルちゃんが覗き込んできました。

「さゆきちゃん?」

『っ・・・!あ、ごめんなさい。ちょっと考え事を・・・』

「・・・・・・そっか。近藤さんから前に頂いたお菓子がありますから、それも持って縁側に行きましょう!沖田さんもどうですか?」

「行くよ。ちょうど僕も甘いもの食べたかったし」

チヅルちゃんからお盆を無理言って受けとり、三人で縁側に座りました。
爽やかな風が頬を撫でて、気候的にも気持ち良い日向です。

お茶を啜りながら初めて見るお菓子を齧っていると、チヅルちゃんが少し控えめに尋ねてきました。

「ねぇさゆきちゃん、答えにくかったら別にいいんですけど・・・いつも考えていることって、さゆきちゃんの故郷のことですか?」

『そうですよ』

「どんなところですか?」

チヅルちゃんは巨人の存在を知りません。
怖がらせることも本望ではないので、私は良いところだけを教えることにします。

巨人が再び現れる前の生活を思い出しました。

『町の人は皆基本的に元気です。チヅルちゃんたちの住むこの島に比べたら、随分と狭い国かもしれませんが、だからこそ近所の人とは皆仲良しです』

「幼なじみ、ってやつだね」

オキタ様の言葉に、チヅルちゃんはズイッと乗り出しました。

「さゆきちゃんにも、幼なじみいるんですか?」

『・・・はい、いますよ。物静かで冷徹に見えますが、本当はただ不器用で少し面倒くさがりやなだけで。仲間に対する情は、人一倍持ってるんです』

言いながら彼を思い浮かべて、苦笑します。
本当に、自分の思いを表に出さないだけな人なんです。

「さゆきちゃんにとって、すごく大切な方なんですね」

『え?』

チヅルちゃんは、咲くような笑顔で言いました。

「だって、今のさゆきちゃんの顔、とても幸せそうですから」






もう一度確認しよう、




(さゆきちゃん、その人男?)

(はい、そうですよ)

(ふーーーーん・・・、名前は?)

(リヴァイです!!)

(わかった、すぐに見つけてあげるからね)

(え?)

(もしかしたら此処に来てるかもしれないじゃない)

(・・・!!確かに!!そうだったら嬉しいです!!)

(・・・・・・そうだね)

(・・・・・・幼なじみさん、逃げてください・・・)

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