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「#寸止め」のBL小説を読む
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#11



カンカンと照り注ぐ太陽の光は、私に集まっていました。
正確には、私の手元に。


久しぶりに手にした剣は、最悪の状態でした。
すっかり忘れていましたが、あのモノ達を斬って以来没収されていたそれを整備していなかったのです。
赤い血はベットリとこびり付き、錆びてしまっています。

部屋の中は少々薄暗く錆や汚れの程度が分かりにくいので、私は立体機動装置ごと縁側に出ることにしました。



ギラギラ輝く術を手放した剣は、冒頭の光をただ集めて吸収するだけで反射することはありません。

『こんなのリヴァイには見せられないな。絶対凄い嫌な顔する・・・』

頭でその表情を浮かべて手首を返したとき、彼は例のごとく後ろからにゅっと姿を現しました。

「ほんとにさゆきちゃんはそのりばんくんのことばっか考えてるね」

『お、オキタ様?!』

「そんなに好きなの?りべんくん」

『あの、リバンでもリベンでもなくリヴァイです・・・』

「あそ、まぁ僕にはどっちだっていいよそんなこと」

『良くないですよオキタ様。名前は親から貰った大切な──「いいから答えてよ。君はりばいくんのこと好きなの?」

そういったオキタ様の表情は、これまで見たことが無いほどに冷めていました。
射抜かれたように心臓が一度停止してしまうくらいに、鋭利でもありました。

『す、好きですよ?』

「・・・なんで?なんでそんなにりばいくんのことだけ好きなの?」

ほらまた。
彼は本当に矢のような目で私を見下ろします。

それはリヴァイの、怒ったときの目と似ていて、私はキュット身体の隙間を絞るように埋めました。
存在を少しでも小さくするために。


『あの、リヴァイだけでなく私は皆さまもお好きですよ?オキタ様のことだって、』

「むかつく。」

『へ?』

「嘘つかないでよ。君にとってはその男だけが特別で、それ以外は一緒なんでしょ。僕を特別枠には入れてくれないくせに」

『あ、の、オキタ様?』

次の瞬間にはもはや、キョトンとしていることなどできませんでした。
剣を持たない方の手首を握られたかと思えば、普段剣の柄に入れられるであろう力が私の骨にグッと加えられていきます。

「そうじゃないなんて言うなら、入れてよ、僕を」

『いっ、痛いですオキタ様・・・っ、』

「僕をその特別な枠に入れてよ。他人行儀に様なんてつけたり、敬語とかいうその壁全部取っ払ってさぁ!」

他人行儀にしていたつもりなどありませんでした。
壁を作っていたわけでもありませんでした。

「さゆきちゃんは、りばいさんのこと、特別に慕ってる?」

あのとき、チヅルちゃんには、首を横に振りました。
事実、今まで自覚なんて無かったのです。

だけれど言われてみればそれは確かに隔たりを醸していましたし、リヴァイだけとどこかで割りきっていたものも少なくありませんでした。

それに、

「だってりばいさんが生きるために必要なら、夫婦にならないとずっと一緒になんていられないんじゃないかな」

あれから、リヴァイに会いたくて仕方がないのです。
話をしたい。声を聞きたい。
ペトラちゃんたちに会えたことで少し落ち着いてきたはずの欲が、またぶくりと泡を噴きます。

私は確かに、彼を特別に思っているのかもしれません。
だけれど、それを否定しても肯定しても、今できることは一つです。


『わか、分かりましたから、離してくださ・・・、』

とにかく首を縦に振れないくらいの痛みと言い知れぬ恐怖から逃れようと、その思いを汲み取りました。

「・・・ほんと?」

『ほんと、ですから、』

「は、ははは。なんだ、案外簡単だね、君も」

渇いた笑いは、いつものオキタ様の剽軽さとは違う気がしました。
払うようにされて離れたオキタ様の熱が、火傷のごとくじりじりと痛みでまた縛り付けます。

『かん、たん?』

「・・・何でもないよ。こっちの話」

『あ、の、』

「じゃあ今日から宜しくね、さゆきちゃん」

数秒前のあのお面のような顔は何処へやら。
ひらひらと手を降って、何事もなかったかのように背中は遠退いて行ってしまいました。




その隙間が仇となる


(オキタ様との約束で、)

(あのリヴァイとの約束が、何故かほどけてしまう気がしました)


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