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「#年下攻め」のBL小説を読む
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#9
きっかけは、同じ体勢に耐えられなかったであろうサイトウ様の腕の力が入れ直されたことでした。
今までの時間を端から俯瞰して、私は一瞬息を詰まらせてからバッと顔を上げます。

『と・・・っ、』

「・・・と?」

『と、ととととととととんだ御無礼をぉぉぉぉ!!!!』

「っ・・・?!」

奇声に近いものを発しながら、彼の身体を思わず押し込みます。
しかし目の前で後ろに重心をずらしてバランスを崩したのも見て、慌てて白いマフラーを引き戻しました。

『ご、ごめんなさい!!!!』

「ぅ、いや、く、それより首が締まっ・・・・・・、」

『は、はわああぁぁあ!』

「っ・・・、」

いきなり手を離してしまい、結局彼は私に倒れ込むことになりました。

ズシリと慣れない重みを感じて一度落ち着こうと深呼吸したのは、サイトウ様も同じようで。

『あの、本当に御迷惑を・・・』

「いや、構わない。俺の方こそ支えきれず、すまなかった。」

『そ、そんな!頭を上げてください!!』

と、言いつつ自分も頭を下げて彼と同じことをします。
入れ違えるように首を伸ばしたサイトウ様は、キョトンとしたあと口元をその見かけにそぐわない大きな手の甲で隠せばそっぽを向いてしまわれました。
そのあと降ってきたのは押し込んだ指の隙間から漏れでるような締まる音。

ふと小首を今度は横に折り曲げれば、

「ふ、・・・っとにあんたは、」

横目でチラリと一瞥され、自分が笑いの対象になっていることに気づきます。

『な、なにがそのような笑いを引き起こしたのでしょうかっ?!?!』

「いや。悪いことではない。ただ赤ん坊のようにころころと表情が変わる故・・・・・・、気にするな。」

『あかっ、き、気にしますよ!』

とはいえ、反芻してみれば確かに随分と短い間で慌てふためいたことだと思い。
終いにはこけおどしのように二人で釣られて喉を鳴らしました。


暫くして、立ち上がるサイトウ様を目で追い上げると山の端から茜色が差し込んでいました。

「落ち着いたか?」

『・・・はい。お陰さまで』

「そうか。ならば屯所に戻れそうか?」

『・・・私が屯所を飛び出してきたこと、お気づきになられていたのですね』

「あんたは普段外にでない上に泣いていたからな。」

『本当に御迷惑をおかけしました。もう、大丈夫です。帰りましょう』


──今の私の家に。
そう言うと、サイトウ様は小さく微笑んで踵を返されました。

宛てもなくただ走り続けていた私はやはり知らぬ道に迷い込んでいたようで、見慣れるものを目にするには程々の時間が必要でした。
サイトウ様が追いかけてくれて良かったと安堵すると共に。
半歩後ろを歩いている最中、会えたばかりの盟友たちをほったらかした後悔が心を蝕んでいきます。

そうしてついに屯所の門を潜ってしまいました。
初めて壁の外に出たような感じがして、思わず隣を見ましたが、靡く白いマフラーの端が視界の隅で遊ばれているだけで。
散々吐露したはずの寂寥が、じわりとまた影を伸ばし、不安倍増。
サイトウ様の背に隠れようと無駄な抵抗を試みようとしたときです。


「サユキ!!!!」


いつの間にか空を覆っていた茜色の光を仄かに瞬かせた金色が、一瞬にして二メートル弱ほどまでに近づいてきました。

『ペト、「サユキィィ!!!!」

そして私を抱えて、肩口に顔を埋めた彼女は飽きずにまた涙で濡らしました。

「ごめんねサユキィっ、大好きだから、何処にもいかないで!!!」

オルオくんやエルドくん。
シンセングミの皆様全員に目配せして、ペトラちゃんの頭をそっと引き付けます。

『こちらこそ本当にごめんなさい、ペトラちゃん。私も大好きですよ。
 リヴァイに関しては、彼のこと終始思っていることができなくて、・・・そんな自分が嫌だったんです。だから飛び出してしまいました』

「も、もうサユキを失うなんて懲り懲りなのっ。お願いだから、ずっと近くにいさせてよ・・・っ」

『それは、こち「さゆきちゃん!」

『チヅルちゃん・・・』

「私も、私もさゆきちゃんと出逢えて本当に嬉しいんです!りばいさんの所にいつか帰らなければいけないのは分かってます。さゆきちゃんにりばいさんが必要なことも・・・。
 でも、でも私もさゆきちゃんが大好きなんです!だから、此処に居れる間は、ずっと私たちの傍に居て欲しいんですっ・・・」

ぜぇはぁと息を切らして、チヅルちゃんは潤んだ大きな瞳に私とペトラちゃんを映しました。
手招きすると、それはある種の小動物のように私の横にちょこんと立ちます。
小さく彼女の名を呼ぶと、ピクリと反応しました。

『シンセングミの皆様には本当にお世話になりました。こんな正体も分からない人間を匿い、着いてはあらゆる気遣いまでしてくださり、何とお礼を申したら良いのか分からない程です』

「お礼なんて、そんな、」

『私、シンセングミの皆さまを本当にお慕いしています。もちろん、チヅルちゃんのことも大好きです』

ペトラちゃんは私の体から離れて、それでもすぐ横にいます。
まだどこか、逃げない私を信用出来ていないのかもしれません。

『だから、』

私の居場所は、只一つで。
リヴァイの横しか無いと思ってました。
それは偏狭な世界しか知らない、臆病でちっぽけな私の偏見に違いありません。

そして私は、この場所に飛ばされました。
今ではシンセングミの皆さまは、私がここで生きていくのに欠かせない存在です。
加えて大変幸いなことに、チヅルちゃんにとっても私は必要な存在でありました。

『此処にいる間は・・・。例え、リヴァイと会っても会えなくても、私はシンセングミの皆さまが好きですので共に在りたいと思っています』

そして、こう思うのです。
必要とされているかは確かに大切ですが、それだけで人間が近くに居るわけではないことを。
この世界に、政に、生活に如何に必要な人でも、彼等全員と会話することはきっと無いに等しいのですから。
手を伸ばせる距離にいるには、手を伸ばすこと自体も必要だと。


『此処に、居させてください』


どうして忘れていたのでしょう。
私はリヴァイに煙たがれても、その隣に無理矢理居たではありませんか。
今更彼の中の私の存在意義なんて、気にしなくてもいいのです。

彼は来るもの拒まずですから。




一歩だけ前進。
(離れていては、結べるもんも結べない)







(はい皆さん。同姓の友情に入り込める自信は?)
((ねぇ。))

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