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「#年下攻め」のBL小説を読む
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銀世界とは良く言ったものだと思う。
最初は、白なのにどうして銀なのだと疑問だったけれど。
朝日を浴びれる時間に起きてみればその理由に頷けた。

『あけおめことよろはじめくんっ!!!』

「明けましておめでとう。今年も宜しくお願い致します、だ。何でもかんでも略すな、なまえ」

『ごめんなさーい!それよりそれより、見てみてはじめくんっ。綺麗だね綺麗だね!』

年初めから諌められても、目の前の幻想具合に私のテンションは下がらない。
朝日が雪に反射してキラキラと輝いて、本当に銀色に見える。
私の指先を追った隣の彼も納得したのか、呆れた表情を消して柔らかい笑みを浮かべてくれた。

二人並んだ影が足元の白基い銀に良く映えて、何だか嬉しい。
わざとぶつかれば驚いた顔で首を傾げてきて、それだけで頬が緩んだ。


初詣の帰り道。
着物は歩きづらくて迷惑をかけてしまいそうだったので諦めた。
『成人式ね』と軽い感じで言ったら「楽しみにしている」と返ってきて、途端約束された一年後の存在が眩しくなってしまった。

このあとの予定はお互い特にない。
二人とも大晦日と正月共に家族親戚と過ごすために、家にお邪魔することも出来ない。
が、それも去年までの話だ。

『あ、あのねはじめくん』

新年初、心拍数の上昇。
冬休みで鈍った身体はそれに追い付いていけないようで、手が震える。

目を逸らさないように、口を一度閉じて唾を飲み込む。

『あ、のね、その、今日、私の家、その、えと、』

うわあああ、呂律が回らない頭が廻らない!
きょとんとしている彼が少しばかし憎かったりするのだ、あどけなさコワイ。

『だ、誰もいないのっ!!』

「……そう、…なの…、か?」

『う、うん、だからね、その、はじめくんが良ければ、なんだけど、良かったら家に来ないかなぁーー?…なーんて、』

真ん丸くした藍色の瞳の中に、おどおどしている私が入っている。
人生での緊張の場面ベスト5には絶対入るに違いないな、と頭の隅で考える。

彼は二三回、その目を右往左往させると、一つ後ずさった。
…え、後ずさった?

その事実にさあーっと顔の血の気が引いていく。
慌てて私の口は動き出す。

『ち、違うの!』

別に何も違うことはないのだけれど、弁解をするときにどうしても出てきてしまう言葉です。

『本当に、あの、はじめくんの都合が合えば!のお話なわけで!その、そのまま解散でも全然構わないんだす!』

“だす”って…、あああダメだっ!!
でも訂正するのも恥ずかしいからスルーして下さい!!

一人彼から視線を外してわたわたと葛藤していると、はじめくんが私の手を引いた。
必然、顔を上げてまた目と目が合う。

「その、」

『はっ、はい!』

「…お邪魔、してもいいだろう、か…っ」

返す言葉は見つからない。
ただただ頷くことしかできない私に、彼は呆れたようにまた笑ってくれた。










私の部屋に入れば、リビングを抜ける時の緊張が解けたのかはじめくんの肩の力が抜けた。

通りがけに持ってきた飲み物を注いで、人混みに揉まれた足を伸ばす。
礼儀正しく正座をする彼にも楽にしてもらって、私は早々に今日のメインイベントを実行することにした。

これはたぶん、さっきのお誘いよりもドキドキするもので。

このプレゼントを提案してくれた沖田くんに言われて他のプレゼントは用意していないからやるしかない。
確かに彼の言うとおり、今他のプレゼントがあったら即刻そっちに逃げていたと思う。
あの人、本当に人の心が良く分かっているなぁ。
うん、凄い通り越して怖いよ沖田くん。


すーはーすーはー。
大きな深呼吸を二つ。

ここははじめくんの親友を名乗る彼の言葉を信じようではないか!


『─────はじめくんっ』

「なんだ」

『誕生日おめでとう!産まれてきてくれてありがとう!』

「あ、あぁ。ありがとうなまえ。俺も、この日をあんたと過ごせて嬉しい」

『っ、』

ぬ、ぬおおお!!
ちょっと待ってちょっと待って!!
そのセリフ、せっかく整えた心の準備を全て壊していくんですけど!

というか、そんなの、

『わ、わたしも、です…』

この返ししか思い付かない。



ドクドクドクトク。
血液が勢い良く流れて、鼓動が耳元で鐘のように鳴っている。

もう一度戦闘体勢を立て直そう。
えっと、沖田くんが言ってたのは、

正座をする。

その状態で彼の膝に膝を付き合わす。

「…なまえ?」

それで、最初は床に手をついて相手を覗き込んで…ってうわー、はじめくん睫毛長いな。

いやいや、違う違う!
えっと、そしたら名前を呼んで、

『は、…じめ、くん…』

「なまえ、その、少しばかり近いとおもうのだが…」

こっちに意識が完全に向いたら、襟元を掴んで、

「っ、なまえ!?」

そのまま、


手に込めた力で、彼の身体を此方側に引き込んだ。

それが重なる寸前、強く強く瞳を閉じてしまったから彼の表情は分からない。
ただ、いつもより硬い感触でぶつかってしまった気がして少し焦った。

直ぐに離れて、彼の服からも手を離して。
私は俯く。

ねぇ沖田くん、極め台詞はなんだっけ。
────ああ、あれだ。




『お、お返しは、三…倍、で…』






恐れていた二度目の沈黙。
今なら私、そこの窓から飛び降れる気がする。

「さ、」

『…さ?』

「三倍では、…足りぬ」

『…………………………じゃあ、はじめくんの好きなだけ、』


寄せ会う身体。
彼の力は私なんかの抵抗じゃ敵わないほど強引で。
後頭部に回された手のひらの感触を噛み締めながら、今度は柔らかいキスをする。






沖田くん。
明けましておめでとうございます。
去年ははじめくん共々大変お世話になりました。
ありがとう。
それでね、はじめくんの誕生日プレゼント、全く沖田くんが言ったとおりの展開になったよ。
私、今年は沖田くんには逆らわないようにするね。
宜しくお願い致します。