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第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -

Until…

─ アイスの日 ─

コンビニを見つけた私は、咄嗟に修の腕をガッシリと掴む。仕事終わり、家の最寄り駅まで迎えに来てくれた修は驚いて目を丸めた。今日が何の日かを知らないらしい。私はあんなにも朝からムラサキと学内のコンビニをハシゴしまくったというのに……全く不憫なやつである。アメリカ帰りゆえに日本の同世代より1つ早く社会人になってしまったのが運の尽きですね。学生万歳!!
  
『ヘイお兄さん! 寄り道しようか!』
 
「はあ?」
 
訝しむ彼にニヤリとほくそ笑んで店内へ連れ歩く。近所の贔屓店ゆえ勝手知ったる道を進み、お目当ての場所でブレーキを踏む。キラキラして見えるブースに口角は上がりっぱなしだ。
修は一度帰ったにも関わらず今もまだスーツを着ている辺り、疲れを癒せるほど寛いでもいないだろう。そんな彼に朗報である。疲れは甘いもので相殺していこうじゃないか!
一方、魂胆を部分的に理解した修は呆れた声を出した。
 
「アイスぅ? これから夕飯だろーが」
 
『ふっふっふ、今日はアイスの日なんだよ修造くん。さぁ、久しぶりにじゃんけんと行きましょうか!』 
 
「アイスの日、ねぇ。ったく、しゃーねーな」
 
言葉の調子とは裏腹に腕捲りをし出す。勝負事となれば買わないわけに行かない彼は負けず嫌いで、指しか使わないのにぐるぐると肩を回した。どんだけだ。まぁこちらとしても負ける気は毛頭ないのだけどな!  
 
「『さーいしょはグー! じゃーんけーんぽいッ!』」
 
振りかぶりコンマ数秒後、こちらに広げられた手を2本の指で挟んで嘲笑う。いよーーしっ!! ちょっと厚過ぎて思ったより上手くチョキチョキ出来ないし何ならハサミ壊れそうだけどまぁ問題ない。ふはは、ざまあみろ!
そのまま修の手をしっかりギッチリ掴んでおく。もちろん奢りの退路を防ぐためである。同居とはいえ、さすがに財布は別持ちなんでね。…………まぁ、本当は全部折半するつもりだったのに私が学生の身だからといって無理矢理2:1にさせられてるからそこら辺は解せないんですけども。来年からは絶対半々にするからな!!

 と、まぁ。ややこしい話は置いといて。改めて宝石箱を見下ろすことにする。
 
『えーっとね、うーん、どうしよっかなぁ!』
 
冷凍ケースに入った陳列品を吟味する。隣にいざるを得ない修は話の通じる相手なだけあって諦めたように息を吐き同じように背を屈めた。あーあ、唇尖ってらァ。……これは少し慈悲を与えなければならないやつだ。…………ふむ、折角なら半分こできるやつにしようか。
 
『じゃあこれで』
 
2色スペシャルなパピオを手に取り、溶けないようパッケージの端を持ってレジに行く。───つもりだったのだが。私が握っていたはずの主導権は、一瞬で向こうに奪われてしまったらしい。「折角ならこっちも買いたい」そう言って、途中でカゴをかっ拐い連れていかれたのはアルコールコーナーだった。聞けば、今日はアイスの日だけじゃなくて “ゴクゴクの日” でもあるらしい。5(ゴ)9(ク)5(ゴ)9(ク)、ね。会社の上司に教わった情報によればビールや炭酸飲料などでグビッと行くべきだということで、修は缶ビールを2本取ってオレンジのカゴに入れる。併せてパピオも丁寧に中へ落としていると、修が名前を呼んだ。
 
「1本目はビールでいいか?」
 
『うん。2本目は「梅酒だろ」さすが奥さん良く分かってるぅ!』
  
進言より先に手に取ってくれた梅酒を見て、パッと閃く。
 
『待って! 自腹にするからもう一個アイス買う!』
 
「はぁ? 腹壊すぞ」
 
『大丈夫大丈夫!』
 
さっきの宝石箱へ戻り、迷わずバニラアイスを手に取った。梅酒をかけて食べるやつ、1回やってみたかったんだよね!  
ルンルン気分で修の持つオレンジのカゴにパーティーを追加してレジへ向かう。おつまみも買おうとする修は何とか諦めさせた。お陰で私が作ってやることになってしまったけど、そんなことより無駄遣いダメ絶対。ただでさえこんなに買わせてしまっているのだから───え? アイス? いやいや、何言ってんの無駄遣いなんかじゃないから。生命の源だからアレは。 

レジの会計中、修は無言で財布を取り出し幾ばくかの小銭を出した。お釣りを受けとって財布にいれているのを尻目に、私が商品を受けとる。
けれどそれもコンビニを出るより先にするりと手を抜けてしまい、代わりとでも言わんばかりに空白の手のひらに彼のものがピタリとくっつく。いやいや、ナチュラルに何してんの!? 手を繋ぐとか初めてじゃないけど、やっぱり人前で堂々とするものではないと思う! 恥ずかしさに慌てて引き剥がす理由を口にした。
 
『アイス! アイス取って!!』
 
「へーへー」
 
呆れた様子で手を離してビニール袋を漁る修。よしよし、これで貞操は守られた。
修に渡されたアイスを受け取って開封し、中身を取り出す。左上を見上げればすぐに目があって、なんか分からないけど笑ってしまった。不思議そうにする修に、連なるうちの片方を持たせる。
 
「なに。俺にもくれんの? 珍しい」 
  
『一言多いなこの野郎。誰かさんが仏頂面だったんでね、神様がお情けをあげるんですよ。折角だからふたりで開けよ』
 
「……反動で向こうに倒れんじゃねーぞ」
 
『大丈夫大丈夫! いくよ、せーのッ!』    
 
本日二度目の呪文をかけ、割れやすいように私の持つ方を少し捻って引き合う。ブチッと千切れて喜ぶのも束の間、ぐらりと身体が傾いた。冷や汗がぶわりと沸く。
けれど、ガサガサ袋が擦れる音がしたと思えば地面につくために構えた手がグイッと引かれる。一瞬で視界が満天の白色と少しの黒に染まった。どうやら修が助けてくれたらしい。後頭部に腕を当てられてるのが分かる。手のひらじゃないのはパピオを掴んでいるからだろう。
修の匂いをやんわり知覚する。まだ少し、彼の家のものが残っているようだ。既に混ざり合う、というより同じ柔軟剤に揃えている今、いつか分からなくなるのだろう。それは少し恥ずかしくて、だけどちょっと待ち遠しい。
 
呑気なことを考える脳内に対して心臓は危機察知能力でバクバクしていて 。密着している現状、それを隠すように『あっぶなー』と声をだせば、額に冷え冷えのアイスが押し付けられる。
 
「アホ! だから言ったろーが!」
 
『いやほら、フラグ回収って大事じゃん?「あ゙?」スンマセンでした』
 
今日イチで荒く息を吐いた修はまた唇を尖らせる。もはやオトンだ。うむ、修がオトンなら……そうだな、くぼやんがオカン。私が娘でぐっちーがペットだな。この前4人で呑んだばかりだけどもう会いたくなってきた。くぼやんくぼやん。
ごめんごめんと謝って背中をトントン叩いてあやす。「やめろ」と言われつつ、今度はアイスを頬に当てられた。ひぃ、冷たい!
 
何だかんだで帰路を辿りつつ、ふたりでアイスを啜る。いやー、アイスの日で奢りだからかな、いつもより2倍くらい美味しい気がする!
声に出した感動に、早くも上半分を透明にしている修が言った。
 
「アイスっつーかシャーベットだけどな」
 
『黙れKY、そんでもってもーらい!』
 
「あ!?」
 
もう一度腕を掴んで引き寄せ、修のアイスを奪う。うんうん、やっぱりバニラも美味しいねぇ。この美味さを咀嚼もなくただ飲み込むだけの単純動作で終わらせるのは惜しい気もする。
ふと、何も反論してこないのに気づいて見上げてみる。月を背にわなわなと口を動かしている修。なんだよ、しかたないな。
 
『はいはい、あげますよ。はい、アーン』
 
「なっ、…………逃げんなよ」
 
『ん?』
 
じろりと睨む修の顔は、ほんのり赤かったかもしれない。意味不明なことを言われて首を傾げると、差し出した手の上に修の手が重なった。アイスを握っていたからか、冷たくて気持ちいい。そのままなぜか押されて、伸ばしていた肘を戻す形になる。
 
『うぉ!? ちょ、なにがしたい───、ッ!?』 
 
私の顔の位置まで戻されたところで収まらず、ツッコミの為開いていた口に押し込まれる。更に修は手の中のものを潰し始めるわけで、ぬるりとシャーベットが口内に侵入した。バニラより主張の激しいチョコの香りがさっきの一口をすっかり持っていってしまう。
割りと大量に入り込んだものが零れてしまわぬよう唇を縛ろうとした刹那、左上から思いもよらぬ栓が降ってきた。舌を舌で擦られて肩が揺れる。器用にほぼ液体状のチョコを掬いとったソレが離れて、満足そうに1つ頷いた。いつぞやの私のようにニヤリと上げた口の端を、舌がペロリと舐める。
 
「ごちそーさん」
 
『ッ天っっ誅!!!!!!!!!!』
 
「痛って!!!」   

ヒールの足で下した罰に、患部を跳ね上げて喜んでいる。ホントマジでいい加減にしろよメリケンフェロモンお化け!!! いちいちムンムンさせるのやめろ!! 氷室かよ!! 
 
涙目で舞を踊る彼を置いて、さっさと歩く。あーくそ、アイス食べてるのに暑いとか無理! 奪われたものを取り返すように、パピオを勢いよく吸い込んだ。
 
 
荷物を持ってくれてる修への優しさで、私が鍵を開ける。ここに引っ越してきた当初、同じ鍵を使う度に感じていた、こう……なんかくすぐったい感情はそろそろ薄れてきた。慣れって素晴らしい。
私の『ただいま』に続いて修が「ただいま」と言う。それに『お帰り』と返せば、苦笑と共に「お帰り」と返された。こだまでしょうか。いいえ、人間です。
 
家に帰ってきて襲う徒労感に負けず、ソファーを避けてなんとかキッチンに入る。一度帰ってきてくれた修がちゃんと炊飯器をセットしてくれているのを確認して、水道で手を洗い冷蔵庫を開けた。必要な食材も仕事帰りに修が買ってきてくれている。
私が卒研で修より帰りが遅くなるときは大体こうやって役割分担をすることが多い。夕飯も作ってくれたら万々歳だけれど、食費も家賃も多く払って1日働いてくれてる人に「凪沙のが食いたい」と言われてしまえば断れないのである。
 
修はスーツから着替えに行ったらしく、ひとりキッチンで豆腐と挽き肉とシソと梅を混ぜ合わせタネを作る。戻ってきた修が手伝うと言ったので、小さなまな板でハサミを使ってシュウマイの皮を細く切ってもらった。
金糸卵を作って、修と一緒にさっきのタネを丸めて修が切ってくれた皮に転がしてくっつけてレンジへ。彼が仕上げをしてくれている間に3.5人前の中華麺を茹で始め、その間にキュウリとハムを冷ました金糸卵を細切りにしておく。本日のメインディッシュは冷やし中華です。簡単でステキ! 盛り付けは修に任せて、付け合わせで作ったふわふわシュウマイの出来を確認。うん、大丈夫そうだ。それもお皿に盛りつけ、今日の夕飯は完成です。
 
買ってきたビールと共にテーブルへ並べる。プルタブを摘まんで倒せば、プシュッとガスに乗って小さな水滴が飛んだ。こうやって何でもない日にふたりで缶ビールを開けるのは初めてかもしれない。「ん」と声がしたから顔を上げれば、修が缶を突き出して揺らす。求められていることに頬が弛んで、そこに自分の分をぶつけた。
 
『今日も1日生活費稼ぎお疲れさまでした』
 
「生々しいなオイ」
 
ツッコミに満足しつつ、ビールを煽る。喉を鳴らして苦い液体を通せば、冷たさが食道を通って胃に届くのが分かった。

『ゴクゴクの日全うできたわ』
 
「だな」
 
冷やし中華とふわふわシュウマイを平らげ、洗い物と洗濯物畳みを終え、修と入れ違いで風呂に入る。就寝準備を大方終えて、髪を乾かすより先に冷蔵庫からアイスを取り出し小さな器に移し変え、それと冷やしていた梅酒とスプーンを持ってテレビの前のソファーに座った。隣でパソコンを開いている修は仕事中らしい。外資系は大変だな。
画面との間にある背の低いローテーブルの上で梅酒をかけ、器とスプーンだけ持って背凭れに背中を預ける。銀の匙に白いクリームを乗せて舌へと運ぶ。ビールの時とは違った冷たさが喉を通っていく様子に至福を感じた。アイス考えた人はホント神。ありがとう。
 
『うまい!』

「良かったな」

『うん! これは素晴らしい!』

梅酒の大人な味が、これまたいつもとは違う風味を醸す。パクパクと口にアイスを送り続ければ、なぜか頭を撫でられた。子供扱いやめろ。
そんな彼に残り4口ほどとなったアイスをスプーンに乗せて一口どうかと差し出してみる。正直に言えば、このときの私は完全に帰り道の暴挙を忘れていて、軽く目を見張ったその様子で漸く思い出した。だが、やばいと焦りを感じても後の祭りである。開かれていた切れ長の瞳が瞼に軽く追いやられ、細くなった眼孔がしっかりと自分を捉えたのが分かった。さながら獲物を狩るような目つきである、死んだ。
 
「ふーん? “また” くれんの?」

『い、いや、やっぱり勿体ないからダメ』

「んなケチくさいこと言うなよ」

パタンと閉じられたパソコンに恐怖を覚える。アカン。アカンてコレ。 顔も上半身も即座に正面へ戻したけれど、視界の右端のテーブルにパソコンが置かれる。
そして、横から覗き込むように顔が近づいた。それだけじゃない、伸びてきた右手だって右頬をするりと撫でる。タンマ!! タンマ!!!
 
『あげないってば! 仕事は!?』
 
「終わったからちょーだい」 
  
『やっ、』
 
わざと子供らしい言い回しはやけに妖艶で。突然降って沸いた甘ったるい雰囲気に、大急ぎでスプーンをアイスに潜らせてそれを修の口に突っ込んだ。驚いた様子ながら、道理に従って喉を動かす修。なんとか凌げた。
 
ふぅ、と息を吐いて残る数匙にゆっくりと舌鼓を打つ。あー美味しい。酒シリーズ、違うバージョンもやってみよう。そんな風に考えながら、最後の一口を舌に乗せた瞬間。
無理矢理スプーンを引き抜かれ、同時に盗られた器と共にローテーブルへ無造作に置かれる。口の中のものを意識して開けない唇に、音もなく唇が触れる。修の左手が私の腰に回って右手は二の腕を優しく押さえられた。胸に押し当てられた私の力は修にとっては痛くも痒くもないらしい。
びっくりして飲み込んでしまった口内に、二枚扉を抉じ開けた舌がぬるりと入り込んで、さっきまでいた液体を探るようにぐるりと舐め回された。ゾクゾク背筋が震えて、意識しているつもりなんてないのに熱の籠った息が漏れてしまう。

暫くして離れた修は、さっきまで散々人を弄んだものでパピオのとき同様ペロリと唇を舐めた。
 
「こっちの方が美味くね?」

『っう、美味くないわ何すんじゃい!!』

「ハイ残念でしたー」

『うわっ!』

上に振り被った右腕は下ろすより先に手首を掴まれてそのまま修の肩へと引き寄せられる。雪崩れ込む上半身を受け止めながらもそのまま体重を掛けられてあっという間に背中がソファーについた。仰向けになった私を覗き込む修の両手がこちょこちょと脇下を攻撃する。

『ひあっ、あはは!! 待って! タンマ! くすぐっ、ひぃぃー!』

「擽り弱いのって不利だよなァ」

『くっ、そ……! うひゃあ! 息できなっ、やめ、くすぐんな、ンッ!?』

かぷ、と。突然食べるように口を塞がれる。ぬるりと入ってきた舌はまたまた私のを絡め取った。梅の味が微かにして数秒後、音を立てて離れていく。
目が合うと恥ずかしくなるこっちとは違って満足そうに口角をあげる修が、両手で私の頭や顔を撫で回す。耳に髪をかけたり前髪を逆立てたり、頬に手を滑らせたり唇を指でなぞったり。急に空気が入れ替わった───いや、戻ってきた甘い雰囲気に息を詰まらせて視線をテレビの方へ逃がす私を、目の前の男はフッと鼻で笑う。

『っなに笑ってんだ!』

「わりィ。ついな、つい」

『く、くすぐったいからやめて!』

「却下」

『な、ッ……!』

チュ、と耳の後ろに唇を当てられて肩が上がる、体が強張る。ああもう! 何でこうなるかな! するりと服の下から直接脇腹を触られて、私は堪らず叫んだ。

『待った!! 明日学校!! ユーも仕事!!』

すればピタ、と修の動きが止まって私を見下ろす。とてつもなくつまんなそうな顔で、さっきの余裕が見える表情の影すらない。

「……そろそろ平日も許してくんね?」

『やだっ!!』 
 
「足りねーんだよ。俺が何を糧に仕事を頑張ってると思ってンの」

『生活の為だよね!?』

「あー、たぶんそれ漢字間違ってるわ。性の方だから」

『分からない理解したくない黙れ!!』

こめかみの辺りに顔を近づけてスンと匂いを嗅がれたり伸ばした舌で目尻を舐められたり。すっかり覆い被さるその身体を必死に手で押し返す。

『おいおいおいおい!! ほんとに待った!! ふざけんな!!』

「今日は “愛す” の日だろ」
 
『誰が上手いこと言えっつった!! 山田くん!! 助けて山田くーーーん!!』
 
「他の男を呼んでんじゃねぇよ」  
 
斜めに合わさった口は啄むように動いて、その度に音が鳴る。頭の横や二の腕を掴んでいたはずの彼の手はラインをなぞるように身体を弄る。触れられたところ全部から熱が宿って、思わず目をきつく閉じた。
何がアイスの日だ!! ゴクゴクの日どこ行った!!!
 
「……凪沙」

『っ、や、』

もう一度手にTシャツを掻い潜らせた修が耳元で低く囁く。

「熱籠ってっけど?」

『ぅるさい……!』

「その気になってきたんじゃねーの?」

『なってない!』

「声うるせぇ。もっと俺のに合わせろよ」

ボソリと小さく低めの声で喋るのは、こういう時間の修の癖だ。誰に聞かれているわけもないのにこそこそと耳元で囁くから、無駄に背徳感に駆られてしまう。
口を噤んだ私のそれを勝手に肯定と解釈した修は、嬉しそうに眉頭を下げた。