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アリウムの唄

見つけて集めた。

俺は黒子と本棚の隣にある机を探ることにした。この机の上には窓があったが、閉まっていたカーテンを開いても外は絵の具で塗り潰したように真っ暗だった。んっとに気味悪ィ……!!

心なしかテンション高めの黒子は自棄に積極的で、何の躊躇いもなく机の引き出しに手をかけていく。
俺は後ろからそれを傍目に見てるんだが、───いや、全然ビビってねぇよ? あれだよ、何かあったときに直ぐに黒子を机から離せるように構えてんだよ本当だからな!!

まあ、話を戻すと机には引き出しが2つあって、机の脚の間に椅子を入れて余ったスペースに3段のキャビネットがあるから合計で収納スペースは5つだ。
机に直についてる引き出しはどちらも空で、黒子はキャビネットの1段目を開ける。だが、その棚だけ鍵穴があった通りガタンと音を立てただけで動きはしなかった。
次いで2段目の引き出しが開かれたとき、黒子が小さな声をあげた。

「火神くん、見つけました」

「え!? 見つけたって「リコ、それ…」……」

その時の木吉先輩の呟きを聞いたのは偶然だった。俺に被さった声は途中で萎んでしまい、状況は目で確認するしかない。咄嗟にカントクが人差し指を唇に当てたのを目視して、俺も出来るだけ喉を締めて肩を叩く。

「おい、黒子。カントクが何か持ってる!」

振り向いた黒子は「行きましょう」と先陣を切って先輩たちの元に歩き出した。こいつの手にあった小さな2つ折りの紙は、ジャージのポケットに突っ込まれる。


カントクは俺たちに気づきながらも、持っている本の中に指を埋ませた。実際は、“そんな風に見えた” だが。一瞬どうやって入れてんのか目を疑ったが、良くみればそれは箱のように凹んでいるらしい。空いていた穴にカントクの指が入り、引っ掛けるように持ち上げていく。本には似合わない木の板で出来た、蓋の役割を持つそれは、すんなり綺麗に外れた。
そして中に入っていたのは、アンティーク調の茶色い小物だ。

「っ、これ…っ」 「鍵……!」

「おおー、えらいもん見つけたなぁ」

「「「……!!!!」」」

感動に浸る間もなく、上から降ってきた胡散臭い声にカントクは蓋を閉める。
糸目のまま眼鏡のブリッジを上げた今吉サンは、にやにやと笑って両手を胸の高さまで挙げた。

「おー怖怖。そんな警戒せんでもええやんか。奪うわけあらんし」

「あらごめんなさい。少し驚いただけです」

カントクも負けず劣らずの笑顔で本もとい箱を胸に抱えると、彼の目に映さなくてもいいように情報を口頭で並べだした。 “唄う何とか” という本の裏表紙に細工がしてあってそこに入っていたこと。鍵は大きさからして出入り口と思われる扉のものでは無さそうということ。

「他の場所の鍵ゆーわけやな」

「はい。恐らくは」

寝室を隔てるものより一際大きい扉の鍵穴を遠目に確認する。確かに長さや大きさからして嵌まらなさそうだ。
他の鍵穴か……。と考えて、さっきまで見ていた机の存在が頭に浮かんだ。あの引き出しの鍵穴なら調度いいんじゃねぇか?
その意思を伝えようと黒子を見ると、今吉サンに近づいてさっき見つけてた紙を紹介していた。

「これは?」

「そこの机の下にあるキャビネットの2段目の引き出しに入っていました」

「中は?」

「まだ確認していません。」

「ほな、一応一旦集まろか。とりあえずそれは黒子くんが持っとき」

「分かりました」

てっきり今ココで開くのかと思いきや、またジャージに仕舞われていく紙を見送る。今吉サンがカントクにも鍵を持っておくよう伝えた所で、俺も一歩踏み出した。

「あの、ちょっといいか、です」

「どうしたん火神」

「そのカントクの鍵、なんすけど、黒子が紙を見つけたキャビネットの上段に使えるかも……」

「確かに、サイズは合いそうですね」

「確かめる価値もありそうやな。まあ後で試してみよか」

トントン拍子で決断した今吉サンは笠松サンと話していた赤司の元に行き、何かを話す。たぶん集合をかける旨についてで、案の定赤司が2度手を叩いた。快い音が部屋中に響き、寝室の中にいた青峰たちも出て赤司に注目する。

「幾つか鍵の手がかりになりそうなものを発見したようですので、一度集まって報告をお願いします」

その言葉にぞろぞろと部屋の中心に向かい、最初の円を作った。