助ける
「てめぇら…シズクに何しやがった!」
ジタンが腰のダガーを引き抜いてゾーンに襲い掛かる。
怒りに任せた剣にゾーンが驚いたのか、慌てて逃げるように避けた。
「姫さまぁ〜っ!!」
スタイナーも慌てて奥の台座に寝かされていたダガーの元へと向かって走っていく。
それを塞ごうとソーンが両手を広げたが、フライヤが大きく跳躍しその勢いに任せソーンに向けて槍を振り下ろした。
「ここはわしに任せて、そなたはガーネット姫を」
「す、すまん! 頼み申した!」
フライヤの助太刀にスタイナーが礼を言うと、そのまま台の上へと駆けていく。
その中、ジタンはゾーンに魔法を使うタイミングを与えぬように連撃を加えていった。
「ビビ! お前はシズクを助けろ!」
「う、うん…、分かった!」
ジタンのフォローに入ろうとしていたビビに、ジタンが叫ぶ。
間近で見ていないから分からないが、髪に隠れた顔は土気色をしていた。
非常に状況は不味いであろう。
ビビは慌ててシズクに近づくが、鎖の部分を外すのに手間がかかる。
鍵らしきものは近くにはない。
困惑した表情でビビが辺りを見渡すと、スタイナーがダガーを抱き上げて此方へと向かってくるのが見えた。
「おじさん…!」
「むぅ、シズク殿! 今お助けしますぞ!」
鎖で繋がれているのが見えると、スタイナーはダガーをそっと床に寝かせては剣を抜いてシズクの拘束を叩き切った。
拘束具が無くなったシズクの身体は力なく崩れ落ちるのをビビがなんとか抱き留める。
「……う…、ビ…ビ……?」
「シズクおねえちゃん! だいじょうぶ!?」
「……お願い、ダガーのとこ…に……」
シズクの口から零れ落ちるその声をなんとか拾い上げると、ビビは躊躇いながらも静かに頷く。
ゆっくりと肩に担いで、すぐそばにいるダガーの傍に座らせた。
「シズク殿…っ、何があったのだ!? 姫さまは…姫さまは死んでしまわれたのか…!?」
スタイナーが狼狽えながら目に涙を浮かべて声を上げる。
シズクがゆっくりとダガーの胸に手を置けば、それは微かな鼓動のみが感じられた。
「……だいじょうぶ、スタイナーさん。きっと…だいじょうぶ……」
まるで自分に言い聞かせるようにシズクは告げる。
すると、ジタンとフライヤの猛攻に負けたのかゾーンとソーンの悔しげな声が地下に響き渡った。
「くそ〜〜〜ッ! 覚えているでおじゃるよ!」
「でも、もうガーネット姫は用無しでごじゃるよ!」
「イイ気味でおじゃるよっ!」
「イイ気味でごじゃるよっ!」
捨て台詞も忘れずにピエロたちは一斉にその場を去って行く。
二人が去ってくのを見てから、ジタンはすぐに踵を返した。
「シズク! ダガー!」
「二人の様子はどうなのじゃ?」
ジタンの後ろをフライヤが追い、意識が無いダガーと今にも息絶えてしまいそうなシズクの姿を見て眉を寄せる。
「……決して、良い状況ではなさそうだのう」
「……とにかく、今はどこか安静に出来る所に……」
ジタンが提案しようとすると、シズクがゆっくりと動き出して、ダガーの方へと身体を向き直した。
それに焦りジタンが声を上げるが、シズクは静かに微笑んだ。
「待てって! シズクは動くなっ!」
「ジタン…、また助けに来てくれたね…? やっぱり、ジタンは
わたしの王子さまだ……」
弱々しくも優しく微笑むシズク。
それにジタンが言葉を無くすと、シズクはダガーに触れた手に力を込めた。
それと同時に桃色の光があふれだす。
「ダガーは…わたしが助ける…!」