sirius[恒星の内で最も明るい星]










「兄様」


誰も通らない廊下。
一人佇む男に声をかける。
自分より少し背が高いことを除くと、ほとんど変わらない見た目。

「レギュラス」

声に気づくと嬉しそうに微笑んで歩み寄る。


「会いたかった………!」

強く抱きしめ合った。
それは親愛の表現。
お互いの体温を感じる。


「ちょっと痩せたんじゃねえか?」

心配そうに顔を覗き込む兄。
そんな表情にも愛おしさを感じる。

「そうかな、兄様こそ夜眠れてないんじゃないの?」

「俺は大丈夫だ
昼に寝てるからなっ」


「もう………授業はちゃんと受けきゃダメだよ」


苦笑しつつも、兄と居る時間に幸福を感じずにはいられない。

シリウスとレギュラスは兄弟だが、一緒に居られる時間はほとんどない。

兄は獅子寮、弟は蛇寮。

純血を誇る名家に生まれたことが二人を引き離してしまったのだ。


自分達を縛る枷となる血が、繋がりを保つためのものだということ事実。
そんな矛盾した関係に笑えてくる。

だからこうして誰も居ない時を見計らって、密かに逢っているのだ。



「俺はこうして夜にお前と会えることの方が大切だからな」

レギュラスの腕の中で幸せそうに笑う。
兄を見ると、胸の中に幸福が満ちてくる。


そっと頬に手を当て、額に唇を堕とす。
すべての愛情を注ぎ込むように。



「なっ………お前ここ廊下……………!!」

真っ赤になり驚いた顔を見せる兄。


手に触れた頬が熱くなった気がした。


「兄様…………愛してる………」


抱きしめる腕に力がこもる。


きっと、込めたのは兄弟としてのそれだけではなくて。



「俺も愛してるよ、レギュ…………」

シリウスも強く抱きしめる。



「うん、知ってる………」



知ってるよ


それは僕の愛してるとは違うってこと



この願いは一生叶わないこと



生まれた時は一緒でも


ずっと一緒には居られないこと



貴方には


僕以上に大切な人がいること


兄様は光の中

僕は闇の中



だからせめて



兄様が僕の光でいて



小さく消え入りそうな声で

でも何よりも強い声で呟いた。



「愛してる………………」





神様どうか、僕から光を奪わないでください









満天の星空の中

貴方が僕の光だった



−−−−−−−−− end








あとがき


レギュの愛は誰よりも強いんです
最初はギャグで締めようとしたのは内緒







/
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -