頭がパーンてなってやっちまいました。
クラムが阿呆の子、ロンが可哀相。


















午後の授業が終わり、静かな図書室。
私はこの落ち着いた空間が好き。
授業が終わってからまで勉強する生徒はほとんど居ないから、より集中出来るから。
ノートのページをめくる音とか羽ペンで羊皮紙にインクを染み込ませていく感触で穏やかな気持ちになれる。
ロンに言わせて見れば授業が終わってまで図書館で勉強なんて頭がいかれてる、らしいわ。
失礼ね。
私にとって見れば彼の成績を考えるだけで頭痛と目眩がするわ。
マグル出身の私が魔法なんて未知の物を学べるのが楽しくて嬉しくて使用がない。
ページを開く度にどんどん自分の知らない世界が溢れてくる。
なんて幸せなのだろう。
もしペンを持つな、なんて校則が出来たらそれこそ気絶してしまうかも知れない。

窓から入って来る風にすっと目を細める。


しかしそんな静寂も威勢良く開けられたドアの音にあっさりと掻き消される。
隣で本を読んでいた子達がきゃあっと声を上げる。
それは恐怖とかなんじゃなく、期待と驚きからくる黄色い声。

まるで此処が自分の家であるかの様にずかずかと入って来るダームストラングの制服に身を包んだ生徒。
わあ何かしら筋肉増強の本でも捜しに来たのかしら。
そういえばまず字が読めないわね、なんて心の中で独り言を言っていると既に目の前に立っていた。


「やあハーマウンウォニー。」
「ハーマイオニー、よ、クラム。」


毎日言っても私の名前を覚えてくれない。
本当に脳味噌筋肉で出来てるんじゃないかしら。

了承も得ずに前の席に座る彼。
はい私の幸せタイム終了。

隣の女の子達がひそひそ話してるのが聞こえる。
背中に感じる羨みと嫉妬の眼差し。

悪いけど、クラムの目当ては私ではないのだ。
そりゃ毎日わざわざ図書館に通い詰めるくらいだから、最初は好意を持たれてると思っていた。
でも話しをしてみるとどうも違うみたい。
話をするっていっても殆どは私が本を読むのを見てるだけだけど。


何かを聞きたい様な顔をしたクラムが見詰める。


「何の本を読んでいるんだ?」

「勉強していたのよ。たった今中断させられたけど。」

「すごいな、君は本当に勉強熱心だ」

「それはどうもありがとう」

彼には皮肉すら通じない。
箒に乗る姿は格好いいかも知れないけどそれだけだ。


「えー、あの、君は頭もいいし、優しいから良い友達を持っている。マグル出身なのに」

「最後だけ余計よ」

しどろもどろに話を切り出す。
はっきりしない言い方に少し苛々する。


「何が言いたいの?」

こういう話し方をするクラムはいつもと違う。
いつもより下手な喋り口調。
何かを私に求めてるみたいに。

意を決した様に大きく息を吸い込む。


「僕は、気になっている子がいる。
君の友達なんだ、いつも一緒にいるだろう」


なんだそういう事か。
でもだれだろう。
仲の良い子はいるが、そこまで近しいのは思い当たらない。
ジニー、は歳が離れ過ぎてるからきっと違う。
ルーナ、ラベンダー………。


「どの子なの?」


「わからない、名前は聞いた事がないんだ。」

それじゃあ何もわからないじゃない。

「じゃあその子の特徴は?髪型とか慎重とか」


するとうっとりした様に語り出した。


「彼女の特徴?それはもう言い尽くせない程愛らしい!!
燃える様な赤毛!
すらりと伸びた長い手足!
天使の囁きのようなハスキーボイス!
通り過ぎたときの甘い純朴な香り!
雀斑を長い前髪で隠している処も奥ゆかしい!
そして何よりも俺を見詰める翡翠の瞳!
ああ、彼女の事を思うと頭がどうにかなりそうだ!!」


既にどうにかなってるわよ。
にしてもそんな子いたっけ?
頭の中のイメージと誰も重ならない。


「だから、彼女と親しい君に協力してもらいたいんだ」

「それは解ったけど、その彼女に心当たりがないわ」


仰天した表情でクラムが目を見開く。

「わからないのか、いつも三人でいるだろう?
君とポッターと彼女と三人で」


言った意味が理解出来ない。
もう一度脳内で繰り返す。
赤毛で雀斑があって背が高くて、私とハリーといつも一緒にいる…………




ってまさかロン?!


「えっと、その、あれは………」


「これでわかっただろう!この学校に来て彼女を見たとき、僕は虜となったんだ!!」

「いや、だからね………」

「まさか、もう恋人がいるのか?」


「ううん、そうじゃなくて………」


「それなら問題無いな!」

こっちの話等まるで聞いてない。
完璧に誤解している。
どうしたらロンが女の子だなんて見えるのよ。


「お願いだ、彼女と話をさせて欲しい。
君にしか頼めない」


猛獣の様な彼が縋る瞳に、本当の事が言えなくなる。
うう、断れない。



「話すだけなら別に………後の事は知らないけど」


「本当か!ありがとう!!」


思わずイエスと言ってしまった。
キラキラした顔で喜ぶ。
心にちくりと刺さる罪悪感。


「じゃあ明日会いに行くから頼んだよ!」


跳びはねて図書室を走って出て行った。
うん、此処が図書室だって完全に忘れてるわよね。



はあ、と溜息を尽きながらノートを閉じる。
もう勉強なんてする気分じゃない。

ロンになんて言おう。
まあ彼はクラムのファンだから上手く言えば、喜んでについてくるかもね。
ああもう頭痛が痛い。
言葉がおかしいけど気にしない。

心の中でロンにごめんと謝り、図書室を後にした。





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何だかごめんなさい。
ビクトール×ロンなんて世界中捜しても見つからないCPだとおもう。
ゴブレット見た時に妄想が弾け飛んで出来ました。
だってロン可愛いもの。
一体私はクラムを何だと思っているのでしょうか。



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