それからしばらく、テリーは自分の魔力の総量を把握せずに強大な魔法ばかり唱えたがるミニデーモンの教育に力を割かねばならなかった。なんせこの小さな悪魔ときたら、呪文を唱えてそれが不発だった時に硬直してしまうのだ。悪魔族は総じてプライドが高い、そう聞いたことがあったテリーはそれに納得もしていたが、発現しない呪文を唱えて無駄な隙を晒すのだけは我慢できなかった。

「イオナズン、マヒャド、ベギラゴン・・・随分高度な呪文を覚えてるもんだ。親に教えてもらったのか?」
「ギ!」

スラリンと比べて、このミニデーモンは口下手なようだった。基本的に人間が理解できる言葉は喋らずに鳴き声の調子で意思を伝えてくる。フォーク型の武器を握り締めながら元気よく頷くミニモンを見て、テリーはやりづらいなと思って腕を組んだ。

「それで、お前の精神力はどれぐらいだっけ?」
「ピピ・・・」

一生懸命両手を使って、ミニモンが数字を数え始める。その隣でゆらゆらと機嫌がよさそうに揺れているスラリンを眺めながら、テリーは以前ミレーユに習った呪文に使う精神力の値を思い出し始めた。魔法使いにはならない、と言ったにも関わらず彼の姉はもしもの時のためにと彼に魔法の概要やらなんやらを教えられるだけ叩きこんだのだった。そのその甲斐あって、テリーはなんとかホイミやメラなんかを使えるようになったが、それでもやっぱり彼は頭を使って呪文を組み立てることよりも剣の方が得意だった。

「いち!はち!」
「へぇ、18もあるのか」

イオナズンが24、ベギラゴンが20、マヒャドが確か22・・・とミレーユに教わったことを思い出しながらテリーはこの小さな悪魔に対する評価を僅かに上げた。これなら近い将来、ベギラゴンを顕現させることもあながちハッタリではなくなるだろう。一度しか撃てないのが何とも言えないところだが・・・。



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