無題
ロンガデセオイベントはテリーと出会う前だったことを思い出したので途中ですが終了







ヘルクラウドにいた時はまるで悪い夢をみているかのようだった、とテリーはレック達の仲間になってからそこそこ時間がたった今はそう思っている。あの時の自分は自分であったけど自分ではなかったのだ。甘いぬばたまの、腐臭が香る城の中での悪い夢。勿論、そこに乗り込んでいったのはその時のテリーの意思だった。デュランはあまり物事に興味がない。だからきっとテリーが城に行かなかったら、あのどんどん何かに汚染されていくような生活も無かったに違いないけれども。

テリーの旅の目的は、ミレーユと出会えたことで4分の3ぐらいすでに終わりを告げていた。ガンディーノを飛び出したのも、強い剣を求めていたのも、すべては自分自身に納得できなかったからだと言える。ギンドロ団に特攻をかけて、半殺しにされたあと。自宅で寝込んでいたテリーの耳に飛び込んできたのはミレーユの訃報の知らせで、あの時は世界のすべてを呪ったものだ。力があったら、と傷だらけで上手く力が入らない拳を握りしめて幼いテリーは声を押し殺して泣いたのだ。もちろんそれからテリーはどんなに辛くて悲しくて、何もかも投げ出してしまいそうなことがあっても泣かなかった。死んだはずのミレーユと再会できたときはうっかり涙が出てしまったけれども、それぐらいだ。

「うーむ」

もうひとつのベッドの中でレックが唸る。寝ぼけているのかな、と思いながらテリーは宿屋の二階の窓から外の景色を眺め続けた。様々な喧騒が耳に届く、ここは自由の町ロンガデセオ。昨日情報を集めてくる、といってハッサンとアモスとレックは一緒に外に出て行ったのだが、帰ってきたっきり酒臭い体で眠い眠いと言って3人そろってベッドに直行した。バーバラがお酒臭い、と嫌な顔をして3人の服だけでも浄化の呪文をかけてくれたのは、今回振り分けでレックと同室だったテリーにはとてもありがたいことだった。

「うーん頭がいたい」
「お目覚めかい」
「うん起きた。テリー、水くれない」
「嫌だね、自分で取りな」
「冷たいなぁ」

俺は一歩もここから動きたくない、とレックがだだをこねる。気品なんて欠片も感じられないけれど、こいつ本当に王子なんだろか。そう思いながらテリーはふぅとため息をついた。空が青い。

「テリーだってお酒飲みすぎちゃった時とか、あるだろ」
「あいにく酒は飲まないんだ、おれは」
「ええー」

美味しいのに、とレックが夢を見るような口調で言うものだから、テリーはレックがまだ酔ってるんだなと思った。下の酒場で情報収集も兼ねて、どれだけ飲まされたか知らないが財布の中身をスられちゃいないだろうな。3人は強大な魔物を倒すほどの手練だが、酒に酔った時の人間はまるでマヌーサかメダパニをかけられた時と一緒だということをテリーは知っていた。そしてこいつらと来たら全く、有益な情報なんて手にいれられたのだろうか。

「それよりも、レックが起きるのをまってたんだよ。何か良い情報は?」
「水を飲んだら思い出すかも」
「・・・・・・・・」

テリーはマジにレックの頭から水をぶっかけてやろうかと思った。あ、怒った?と酔っ払いの王子様がへらへら笑っているのを尻目に水差しをつかみ、そのまま飲み干す。そしてそのままベッドに乗り、まだ楽しげに笑っているレックの胸倉をつかみ上げた。

「・・・・・・・・・・・・・」

水を飲ませてやる前と後じゃ、随分態度が違うんだなと思ったがテリーはそれを口に出さなかった。出さなかったがとりあえず口を拭っておいて、それから思いだしたかよと呆けたような顔をしているレックの頭を一発ひっぱたいておいた。

「あ、ああ?・・・えと、」
「情報は?」
「あ、うん。情報、情報ね・・・・・いや、なんでキスしたんだよ」


prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -