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タウラ島につくころにはすっかり太陽が頭上に上がってしまっていた。何か食わせろと鳴く腹を抑えながら、リンクはどうにかこうにか自分よりもいくらか大きな青年を背中に背負った。服越しとは言えど、やはりその体はぞっとするほど冷たく、まるで死体を運んでいるようなそんな恐ろしい気分になって彼はかすかに身震いをした。医者の元にたどり着くまでに、リンクは青年の脈を何回も確認したほどだ。

『1日以上はかかると思う。だから患者が起きたら君に手紙を出すよ。安心してくれ』

気付けのブランデーを3匙ほど青年の口に含ませて、それで処置はおしまいだった。こうも体が冷え切っていると急激に温めるのは逆に危険なのだ、と気弱そうな顔をした医者はリンクにそう説明した。

「医者はなんと?」
「起きたら手紙を出してくれるって」
「そうか、ならば良い」

適当な店で腹ごしらえをした後に、必要なものをある程度買い集めてからリンクは赤獅子の王の元へ戻った。波打ち際で一人揺られていた王の大きな口のなかに塩で炒ったナッツをいくつか放り込むと王は顔をほころばせた。彼が本当はものを食べられるとリンクが知ったのはつい最近のことだ。それからはなんとなく、自分ひとり食事を楽しんでいるのも申し訳ない気がして時折何かを買っていったりする。王は気を使わなくてもいいと言うが、何か喜びそうなものを、と品物を選ぶのも楽しみの一つであったりした。

「それまで地図を探さなきゃね」
「そうだな、我らに残された時間は少ない故・・・」

自分も香ばしいナッツをかみ砕きながら、リンクは懐からタクトを取り出した。タクトを振りながら拍子をとれば、タウラ島に向かって吹いていた風向きが変わる。その証に自分の髪をかすかに揺らしていった風を確認して、リンクは白帆をしっかりと張りなおした。


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bkm
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