son of medeyusa2
後で消すかもしれません


リンクが住むトアル村は、国境沿いにあるために、村というには少し大きく、しかし町と呼ぶには少し小さい、そんなところでした。彼の父親は、辺り一帯を治めるハイリア王家に仕える騎士でしたが、えんせいの際にリンクの母親に一目ぼれをして、それからここに住み着いたそうです。国境は王家にとって大事な場所でしたから、大した障害はなかったと父親が笑ってはなしていたのをリンクは聞いたことがあります。

「リンクと同じような美しい金色の髪をしていてなぁ」

画家に描かせればよかった、と父親はことあるごとに言いました。そうすればお前もさみしくはなかっただろうとリンクに向かって言うのですが、リンクが自分の母親の様子をおぼえていることはそう多くありません。ぼんやりと、安心するものに抱かれていたことや、優しく声をかけられたことは覚えているのですが・・・・。

なのでどちらかといえば、リンクが覚えている「母親」はつややかな黒髪をした美しい女性でした。小麦色に似た肌の色をしていて、声は少し低かったように思います。彼女のおなかはいつも大きく膨らんでいて、時折リンクが触れるとそこがかすかに動くのでした。今思えば、あそこに弟がいたのでしょう。「ダーク」とだけ名前を付けられて、弟は今はリンクの母親と、それから弟自身の母親と一緒に眠っています。リンクは時々、村はずれにある墓地に墓まいりにいって彼女たちにいろいろなことを報告していました。

「・・・・あのね、今度ね、ちちうえが剣を教えてくれるって言うんだよ」

僕も将来ちちうえみたいにトアル村を守れるようになりたいんだ。牧場で摘んできた花で作った小さな花束を墓前にそなえながらリンクはそんなことをつぶやきました。この世界には魔物という生き物が存在しますから、人々は決して気をぬくことがないのでした。大量発生した魔物の暴走によって滅んだ村や町はいくつも存在していて、なので魔物を間引くことは騎士の務めでした。最も、たとえ騎士ではなくとも魔物を倒すのは当たり前のことなのですが・・・騎士のように腕が立つ人間が一人いるのといないのとでは、全く違うのでした。

「おや、リンクじゃないか」

ふと、誰かがそうリンクに声をかけました。後ろを振り向くと、そこには妙齢の女性が立っておりました。シルクにも似たつややかな銀髪に、海のような青さを抱いた碧眼が特徴的なその女性は、リンクがよくしっている人でした。

「インパ先生」
「今日も墓参りか?」
「うん、先生も?」
「ああ。シークの代わりに今日は私が来たんだ」

自分の息子の名前を言って、インパは手に持った小ぶりのオレンジをリンクに見せました。彼女の夫が好きだったというその果物は、まるで花束の代わりにとでも言うかのようによく供えられていました。といっても、実際彼女たちは本当にその果物を花束の代わりにしていたのでした。「花は腹を満たさないが果物は満たすだろ」と、理由を尋ねたときにシークにそう答えられたことをリンクは覚えています。

『でも、死んじゃった人はなにもたべないよ』
『死人じゃない。動物のことさ』
『動物・・・』
『墓の周りにはリスがいるだろ。墓前に供えて一日もすると木の上から降りてきて、両手に抱えて持っていくんだよ』

僕は一度それをみたことあるけどね、とてもかわいらしいよ。とインパに似た青い瞳を細めてシークはくすくすと笑っていました。リンクはそのことをシークに聞いてから、墓地の周りに住んでいるリスのことが気になっていましたから、思わずインパの持つオレンジを眺めました。確かに、小さなオレンジは小動物が持っていくにはちょうどいい大きさに思えました。

「ねぇインパ先生、リスはいつ頃オレンジを持っていくの?」
「・・・おや、シークから聞いたのか?」
「うん、かわいかったって言ってたから。僕も見てみたいんだ」
「そうか、でもリスは人の気配がすると警戒してしまうからね」


prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -