停留所にて2
風タクダークは記憶は無いけど喋るし頭も良いダークです。これはおおざっぱなあらすじ的な感じの何かなので修正のためあとで消すとおもいます。





やけに振動が少ない馬車の中で、二人は向かい合わせに座りました。いつも満員の馬車のなかは今日は驚くほど客がいませんでした。具合が悪そうに丸まった猫が隅っこに一匹と、天井にとまった2,3羽のコマドリだけが黒塗りの馬車の乗客でした。

「ここはどこなんだ?」
「さぁ。でも、なんとなくは分かるでしょう」
「あぁ・・・少しは」

ちら、と窓の外を見ながらダークは頷きました。いつのまにか霧はとても濃くなっていて、外の景色は全くと言ってもいいほど見えませんでした。時折何かの影がふっと映るのですが、それもすぐに消えてしまうのでした。

「・・・いつから、待ってたんだ?」
「そこそこ長い間かな」
「どうして?」
「足りないって言われたから」

乗車拒否されたんだ、とリンクは肩をすくめました。ダークがいぶかしげに首をかしげると、リンクは子供のようにいたずらそうな顔をして笑いました。

「ねぇダーク、旅した時間はそう長くなかったけれど、僕ら良く気があったじゃない?」
「ああ」
「ハイリア人と魔物なのに・・・それも君はただ僕の姿を映しただけなはずなのに」

僕が白だと思えば君も白だと答えた。黒と言えば黒と思った。目玉焼きの食べ方も、好きな果物も同じだった。得意なものだけは違ったっけ。それはまるで正反対だった。そこだけは真逆だった。僕が出来ないことは君に出来て、君が出来ないことは僕が出来た。

「ここにきて初めて知ったんだよ。教えてもらったんだ」
「・・・何を?」
「ダークはね、マスターソードに跳ね飛ばされちゃった僕の闇だったんだってさ」

もとは一心同体だったわけだ。リンクはさらりとそう言いました。でも本当は消えるはずだったそれをガノンが拾ってどうにかしちゃった。だから僕の中で育った闇は、今僕の目の前で肉体をもって存在してる。

それを聞いてもダークは対して驚きませんでした。勿論彼はその真実をたった今知ったのですが、長年にわたる自分の気持ちを少々考えた後に、彼は両掌をリンクに差し出しました。その真ん中には火傷の痕が僅かに残っていました。リンクはそれを見て、ダークに痛かったかいと尋ねました。

「いいや、その時の記憶はないんだ。その前の記憶すらない」
「そうなんだ」
「・・・・・・俺の意識はお前が目の前に立っていて、胸にマスターソードが突き刺さっているところからはじまっていて・・・」
「中々嫌な始まり方だね」
「今も夢に見る」
「前はでしょ?」
「ああ、そう。前は、よく見た」

少しかすれた声で、ずっとお前の夢を見ていたとダークは言いました。

「別れてからも、海の底に沈んでいた時も」
「・・・・どんな夢?」
「始まりの夢と、共に旅した時の夢を・・・・・どうあがいても届かない光景に焦がれていた」

ダークがそう呟くとリンクは僅かに苦笑しました。

「悪夢みたいだね」
「そうだな。最初は何かの呪いかと思っていたけれど、やっとその理由がわかった」
「もうそんな夢は見ないよ」
「・・・でも少し惜しい」
「しょうがない。行かなきゃいけないんだから」
「違う、もっと早く知れていたら悩むことも無かった」
「そうかな?」
「ああ、お前が去ったあとに死ねばよかった。そうしたらもっと早く会えたんだ」
「なんだよそれ、怖いぞ・・・」

いつのまにか馬車の中にまで薄く霧が入り込んできていました。たしかにいたはずのコマドリと猫は影も形もなく消えてしまっていました。だんだんと希薄になっていく視界の中で、お互いの瞳だけがよく見えました。機嫌が好さそうに薄く曲線を描いた青い目を見て、ダークはすこしばかり泣きそうになりました。「ダークリンク」としての意識が初めに見たものはそのうつくしく澄んだ瞳だったのです。

お互いが完全に見えなくなる前に、リンクは手を伸ばしてダークの手に触れました。

「ねぇダーク。・・・もう一人の僕って言った方がいいかな?」
「いい。そのまま呼んで」

手が強く握り返されました。ぼやけ始めた意識の中でリンクはほほ笑みました。例えそれが自らの闇だったとしても・・・こうして最後に自分を知る生き物に出会えたのは幸運なのでしょう。許されることなら、と彼はおもいました。もし別の未来があったならダークと共に旅をしてみたかったのに。

握り合った手の境目が分からなくなる前に、襲い来る眠気に耐えながらリンクはなんとか言葉を口に出しました。

「おかえりなさい」
「・・・ああ、ただいま」


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bkm
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